積水ハウス

【積水ハウスの注文住宅】何故高い?その理由を解説します。

大手ハウスメーカーの注文住宅の中でも、積水ハウスの坪単価はトップクラスに位置しています。ボリュームゾーンの80万円台/坪でも、ローコスト住宅に比べれば1.5倍ほどの価格になるでしょう。

最安値のローコスト住宅なら、2倍ほどになるかもしれませんね。もちろん、品質や性能に差があるだろうとは推測できますが、ローコスト住宅メーカーの中には、高品質・高性能な住宅を提供しているところもあります。

本記事では、積水ハウスの注文住宅は、高いのか? 何故高いのか? 高いのに何故売れているのか?、それらの理由を考えてみます。

住宅価格と利益率

はじめに、住宅価格に占める原価と利益は、どのようになっているのか、住宅メーカーのFinancial Factbook(経営内容報告書)や決算書を参考に、チェックしてみましょう。

売上総利益(粗利益)率 =( 売上高ー売上原価 )/ 売上高 × 100

注文住宅の売上高とは請負金額で、売上原価は、資材・施工・現場管理などの建設に必要な費用です。なお、独自の工法や資材の開発費などは、資材コストに含まれているのが一般的です。

積水ハウスのFinancial Factbook(2017〜2021年)によると、同社の粗利益率は戸建住宅部門で25〜26%になっており、他の大手ハウスメーカーの20〜25%に比べて高めになっています。

なお、ローコスト住宅で知られるタマホームの粗利益率は、2018〜2021年の資料で、23.9〜24.6%となっています。この数字は、他部門を含めた連結ですが、住宅の売上が80%ほどを占めていますから、参考にはなるでしょう。

なお、工務店の粗利益率は、25%ほどが健全な利益率といわれていますが、標準的には20〜30%になっているようです。

以上から、企業の大小や住宅のハイクラス・ロークラスに関わらず、ほぼ同様の粗利益率を確保していることがわかります。

しかし、独自の工法や資材を持つ積水ハウスでは、開発費が資材コストに含まれているため、建設原価が上がり、同様の粗利益率でも結果的に住宅価格が上がる要因になります。

営業利益率:( 売上総利益ー販管費 )/ 売上高 × 100

販管費とは、販売費(営業マン給与を含む販売経費、広告費など)と、一般管理費(事務所員給与を含む事務経費など)を指し、営業利益は、先の売上総利益から販管費を引いたものになります。つまり、本記事では住宅建設で得られた利益ということですね。

営業利益率は、儲かっているかどうかを表す数字で、マイナスなら赤字ということになります。FinancialFactbookや決算書を見ると、数%から積水ハウスのように12%前後のところまで各社様々です。

研究開発施設や展示場の維持費は販管費に含まれ、利益を圧迫する要因になります。しかし、その上で12%の利益を確保している積水ハウスは、健全な企業運営ができているということでしょう。そして、これを儲けすぎかどうかを判断するのは難しいところです。

業界を引っ張っていく企業として、研究開発は必要ですし、健全な運営を継続していくための適正な利益も必要です。

参考に、タマホームの住宅部門の営業利益率は、2017〜2021年で2.5〜5%を推移しており、薄利多売の同社らしい数字だと思います。

大手ハウスメーカーが高くなる理由

積水ハウス:実験風景

上で述べた住宅価格と利益率でわかったことを整理すると、各社ほぼ同様の粗利益率の中でも積水ハウスが数%高いこと、そして営業利益率がローコスト住宅メーカーに比べて、10%前後高い、ということです。

しかし、それだけでは冒頭で述べたような1.5倍の数字にはなりません。そこで、積水ハウスの住宅価格を上げている要素をもう少し詳しくチェックしてみましょう。

資材の品質・性能が違う

よく大量一括購入で安くなる、と言われていますが、大手ハウスメーカーなら当然の如く、大量に一括で、あるいはOEMの自社ブランドとして格安で仕入れているはずです。

しかし、ハイクラスな住宅では、上質で性能の高いものを使っているため、低コストの資材に比べると、結果的に高くなるのです。そして、オリジナル資材なら、開発コストも上乗せになっています。

材質が異なるため単純な比較は危険ですが、シャーウッド用の陶板外壁材(ベルバーン)の価格は、サイディングメーカーの最高級商品と比べても、単位面積当たりの定価で2倍ほどの価格差があります。

下請け経費

積水ハウスの下請け業者には、グループ企業の積和建設と指定業者があります。当然、二次請負の利益・経費が上乗せになっています。また、三次請負もあるかもしれません。

下請け業者も必要な利益を確保しているでしょうから、これが売上原価(建設原価)を上げ、住宅価格を上げているのは間違いありません。

しかし、工務店やローコスト住宅メーカーを含めて、住宅の建設工事の全てを自社で行っているところはありません。

問題は、全工事を各下請け業者にさせているか、一部を下請けさせているかです。下請けに出す業種が多いほど下請け経費は上がり、建設原価に反映され、住宅価格を上げさせるのです。

工務店やミドルクラスの住宅メーカーの中には、大工さんを自社の社員として、木工事を直接施工としているところがあります。

木工事額は全工事額の30%前後を占めるといわれており、これを下請けに20%の経費(粗利益)で出した場合、全工事額は6%前後のアップになります。つまり、全工事を下請けに出すと、全工事額は20%のアップになり、住宅価格も20%アップとなるのです。

展示場、広告・宣伝費

積水ハウス:SUMFUM TERACE

工務店あるいはローコスト住宅メーカーと大手ハウスメーカーの販売経費で大きく異るものの一つに、広告宣伝費や展示場展開の大小があります。

積水ハウスの場合、展示場経由で契約に至る割合は、FinancialFactbookによると75%前後になっています。他の大手ハウスメーカーの40%前後に比べても驚異的な数字です。

それだけ、展示場に力をいれているのでしょうが、とうぜん展示場の建設や維持にかかる費用は大きく、先に述べた販管費を上げ、住宅価格を上げてしまいます。

研究開発費

積水ハウス:納得工房

積水ハウスは、総合住宅研究所(納得工房含む)と住生活研究所を持ち、住宅に関するハード・ソフト両分野の研究・開発を行っています。

個別の数字は省略しますが、積水ハウスの売上高に対する研究開発費の比率は、ローコスト住宅メーカーの数十倍にもなっています。

汎用流通品を利用してローコストな住宅づくりを目指しているメーカーと、オリジナルな商品づくりにこだわるメーカーとの差ともいえるでしょう。

研究開発や施設は、住宅性能の向上やユーザーサービスに貢献しますが、住宅価格を上げていることも事実です。

長期保証とアフターサポート

ローコスト住宅メーカーと積水ハウスの保証関係を比べた場合、無償点検期間が大きく異なります。当然、この差は販売価格にも影響しています。

積水ハウスの初期保証は30年間で、その間に9回の無償定期点検があり、ローコスト住宅メーカーでは、初期保証が10年間で6回の無償定期点検となっています。

積水ハウス保証システム

掲載元:積水ハウス/無償点検=3ヶ月、1年、2年、5年、以降5年毎に30年までの計9回

タマホーム保証システム

掲載元:タマホーム/無償点検=3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、10年の計6回

積水ハウスとタマホームは、いずれも有償メンテナンスを行うことで、初期保証期間を延長することが可能です。しかし、有償メンテナンスに関しては意見の分かれるところで、積水ハウスの有償メンテナンスが高すぎる、という評価もあります。

いずれにしても、9回と6回の点検では必要な費用は1.5倍になります。また、30年と10年とでは、メーカーのユーザー管理費も異なり、販管費に影響します。

以上、積水ハウスの住宅価格が高くなる理由を述べました。住宅建設や経理に慣れない方には、理解しにくい部分があったかもしれませんが、それぞれの要因が合わさって、ローコスト住宅の1.5倍ほどの価格差になっているのです。

積水ハウスが高くても売れる理由

積水ハウスの注文住宅の年間着工棟数はトップクラスで、価格が高くても人気があります。同社の注文住宅が売れている魅力を探ってみましょう。

オリジナル工法

積水ハウスの商品には、鉄骨造と木造の2種類があり、いずれもオリジナル工法として型式適合認定を取得しています。住宅の型式適合認定とは、建築基準法に適合していることを事前に審査し、認定する制度です。

単一の固定した形状で型式適合認定を受けるのは、比較的容易ですが、設計の自由度を確保しながらの認定は難しく、様々な実験結果の上で成り立つものです。つまり、優れた人材と研究開発、そして実験施設をもつ積水ハウスだからこそできる差別化なのです。

オリジナル資材等による差別化

積水ハウスのオリジナル商品には、住宅のイメージを左右する外壁材があります。彫りの深い重厚な鉄骨造用のダインコンクリート、そして木造用には同様に彫りの深い、温かみのある表情と自然な焼きむらのあるベルバーンがあります。これらを採用したいがために、積水ハウスを選ぶユーザーがいるほどです。

保証サポート体制

すでに、保証期間については述べましたが、やはり30年保証は、魅力です。そして、例え有償メンテナンスであっても永年保証とするには、企業の永続性と信頼性が必要です。

事業規模の小さい、あるいは実績の少ない企業に、永年保証と言われても、言葉どおりには受け取れませんよね。

ブランド力

高額商品には、どうしてもブランドやステイタスの要素がついてきます。しかし、ブランドやステイタスというのは、簡単に得られるものではありません。

それらを支えるものには、品質と性能、デザイン、そして企業規模と実績から得られる信頼性などがあります。これらを、住宅のように耐用年数の長い商品で、満足させることは難しいものです。

積水ハウスの注文住宅は、間違いなくブランドやステイタスがあると思います。そして、それに価値を認め、高くても満足するユーザーがいることも事実なのです。

工務店、ローコスト住宅メーカーで積水ハウスの注文住宅を建てられるか?

たとえば、工務店あるいはローコスト住宅メーカーに、積水ハウスと同じ住宅価格で注文して同じ家ができるか、となると答えはNoでありYesでもあります。

まず、積水ハウスのオリジナルの工法や資材・商品は、他の住宅メーカーでは使えません。積水ハウスのオリジナルな工法や資材に、魅力を感じたユーザーに、代用品で納得してもらえるでしょうか。さらに、保証はどうでしょうか。高いコストをかけて、積水ハウスと同様のハイクラスな住宅ができても、30年の保証リスクを求めるのは難しいでしょう。

それでも、一般的な工法や流通資材で、品質や住み心地では積水ハウスよりも上回るものを作ることは可能です。住宅性能も同等のものを作ることは可能でしょう。そして、法律で定められた10年間保証の後は、オーナー自らがメンテナンス管理し、地域の専業社や工務店に依頼すればいいのです。

積水ハウスを選ぶユーザーと工務店やローコスト住宅メーカーを選ぶユーザーの考え方や価値観は異なります。それらの是非を問うことには意味がなく、ライフスタイルに合ったマイホームとすることが重要なのです。

まとめ

積水ハウスの注文住宅は高いといわれますが、いわゆる暴利で高くなっているわけではありません。

住宅を、単に衣食住の一つとした場合は、高いとなるかもしれません。しかし、積水ハウスを選ぶユーザーが求めるものは、そうではないはずです。求められる高い品質と性能、そして信頼と安心に支えられたブランドとステイタスに応えた価格なのです。

また、それらを実現するための研究と開発、さらには企業を健全に継続させてユーザーへのサービスを長期に渡って果たすための価格とも言えるでしょう。

積水ハウスのようなハイクラスな注文住宅を望むユーザーが一定数いる反面、コストパフォーマンスの高いローコスト住宅を選ぶユーザーもいます。

どちらを選ぶかは、経済的な事情や価値観、そしてライフスタイルから、最適な方を選ぶべきです。ハイクラスな注文住宅はもちろんですが、ローコスト住宅と言えども高額な買い物ですから、慎重に検討することを勧めます。

【悪用厳禁】注文住宅を723万円も安く買ったコツ

住宅は一生に一度の高価な買い物です。数千万円単位になるため、できれば値段を安くしたいものです。

実は値段の高い注文住宅ですが、建売よりも安く家を建てられる方法があるってご存知ですか?

建売でもいいですが、せっかくであれば自由に仕様や間取りを選べる注文住宅がいいですよね。

ただ、注文住宅は失敗してしまう方がほとんどです。夢のマイホームで後悔したくないですよね。

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