注文住宅はプランやグレードによって価格が大きく異なります。そのため、注文住宅を建てる際の相場価格がわからないと悩む方も多いです。
注文住宅の価格を知る上でひとつの目安になるのが「本体価格」です。
注文住宅は、本体価格と付帯工事の2つに分かれています。これから家を買う際に、本体価格を知らないのはリスクが高いです。
高価な買い物なので、どのような内訳になっているのかをよく理解しておきましょう。
今回は注文住宅の本体価格をメインテーマに、本体価格以外にかかる費用項目なども解説します。注文住宅にかかる費用内訳などを知りたいという方は必見です。
注文住宅の本体価格とは
注文住宅の本体価格とは総額費用のうち、建物本体にかかる費用のみを表したものです。
本来、注文住宅は立地や注文内容などによって価格が異なりますが、依頼主にとっては目安となる価格が把握できないと検討のしようがありません。
そこで各ハウスメーカーは、建物のみの価格を坪単価としてWEBサイトやチラシに掲載しています(例:坪単価○○万円など)。
本体価格は、この坪単価から計算して求めることができます。計算式は以下のとおりです。
【坪単価×坪数=本体価格】
一例として坪単価40万円で、30坪(約100㎡)の住宅を建てる場合の本体価格は1,200万円です。このように見ると注文住宅の価格は安いように見えます。
しかし、詳細は後述しますが、注文住宅の場合は本体価格以外にも付帯工事の費用がかかります。
つまり本体価格は注文住宅の総額費用ではないため、この点は十分に注意しておきましょう。
実際の見積書を確認してみよう
注文住宅は、建物ごとに坪数や間取りなどが異なるため、依頼前に見積もりをとります。しかし、大半の方は見積書の内容やチェックしておくべきポイントがわかりません。
悪徳業者の場合は依頼主の少ない知識に付け込み、見積書内訳を細かく記載しなかったり、適性外の価格が表示された見積書を作成したりする可能性もあります。
マイホーム建築で損をしないためにも、一度見積書の実例を確認しておきましょう。ここでは本体工事と付帯工事にかかる費用が記載された見積書をご紹介します。
本体工事の見積もり
出典:田中工務店
上の画像は、優良工務店が注文住宅を建てる際に作成した本体価格の見積書です。仮設工事、地盤基礎工事など細かい内訳と金額が記載されています。
ここまで細かく記載されていると「どの部分にいくらぐらいの費用がかかっているのか?」といった疑問も解消できます。
ただし、注文住宅の見積書内訳には、専門用語が並べられていることも少なくありません。
このままの状態で見積書を確認しても理解しにくいため、わからない用語などがあった場合は担当者に質問するようにしましょう。
付帯工事の見積もり
出典:田中工務店
前述のように付帯工事とは、建物本体以外で発生する工事のことを指します。具体的には電気、水道の引き込み工事や外構工事などが該当します。
付帯工事は建物本体とは直接関係はありませんが、建物の荷重を支えるための柱状改良や駐車場コンクリート施工など、家づくりには欠かすことができない工事です。
そのため、付帯工事の見積書に関しても、不明点は積極的に質問するようにしましょう。
本体価格の項目
ここからは本体価格の見積書に記載されることが多い項目をひとつずつ解説します。本体価格を構成する主な項目は以下のとおりです。
- 仮設工事
- 地盤・基礎工事
- 木工事
- 断熱・気密工事
- 屋根・板金工事
- 外装工事
- 木製建具工事
- ガラス(硝子:しょうし)工事
- 左官・タイル工事
- 塗装工事
- 内装・クロス工事
- 防水工事
- 給水設備工事
- ガス設備工事
これらの項目があります。それでは、具体的にご紹介していきます。
仮設工事
仮設工事は、工事が始まってから一時的に使用する施設、設備を設置する工事を指します。具体的には足場、仮設トイレ、仮設電気、水道、建築廃棄物を処理するゴミ箱などの設置です。
これらは安心、安全な工事を行う上でも重要な作業となります。
設置した施設や設備は住宅完成後に残ることはありませんが、丁寧な作業がなされているかなど、職人としての良し悪しも見られやすい作業項目といえるでしょう。
地盤・基礎工事
地盤・基礎工事は決して目立つ工事ではありませんが、家づくりの土台を形成する大事な工程です。
地盤・基礎工事で行うのは、基礎の土台をつくるための地面の掘削や土地の凸凹をなくす地ならしなどです。
また、土地によっては傾斜がきつくなっていることもあり、この場合は斜面の土砂崩壊などを防止するために擁壁(ようへき)をつくることもあります。
地盤の掘削が完了したあとは、砕石を敷き詰めていき、ローラー(地面を固める機械)などで掘削面を締め固めます。
その後、型枠や鉄筋の位置を示すための捨てコンクリートが打設(コンクリートを打つこと)されます。コンクリートが乾いたあとは、墨出し(基準線)を引く作業を行い、配筋、型枠組み、コンクリートの打設を行っていくという流れです。
ちなみに基礎工事の方法は、主に「ベタ基礎(防湿基礎)」「布基礎」の2種類です。また、地盤が軟弱の場合は、地面に杭を打ち込む「杭基礎」の工法が用いられることもあります。
木工事
木工事は木材を使用して、建物の骨組みや下地などを構築することを指します。
ハウスメーカーや工務店によっては見積書に「躯体工事」と記載することもありますが、木造住宅の場合は「躯体工事=木工事」という認識で問題はありません。
なお、木工事は木造住宅の場合、工事費の約40%~50%ほどの割合を占めます。
断熱・気密工事
断熱・気密工事は壁、天井、屋根などに断熱材を詰めたり、寸法誤差の小さい建材やテープ(気密テープ)などを使ったりして、断熱性と気密性の向上を図ります。
高気密、高断熱の住宅を実現することで、「冬暖かい」「夏涼しい」という2つのメリットが生まれます。
また、冷暖房設備(エアコン)の効率も良好なため、省エネにつなげることも可能です。
この他、断熱性と気密性に優れた住宅は、急激な温度変化によって脳梗塞や心筋梗塞といった症状も引き起こす可能性があるヒートショックの対策にも役立ちます。
屋根・板金工事
出典:http://uedabk.jp/example/227/
屋根・板金工事は瓦、スレート、アスファルトシングル、ガルバリウム鋼板といった屋根材を設置する工事です。
また、屋根以外にも雨どいの設置作業も含まれます。屋根・板金工事は使用する屋根材の種類や屋根の面積、形などによって費用が大きく異なります。
特にガルバリウム鋼板や瓦といった人気素材は、1㎡1万円を超えることも少なくありません。
屋根材は断熱性能にも影響しますので、事前にしっかりと各屋根材の特徴などを質問しておくようにしましょう。
外装・サイディング工事
外装工事、サイディング工事は、主に外壁などを仕上げる工事を指します。サイディングとは、外壁に用いられるボード状の外壁材です。
現在、一般住宅で使用されている外壁材の約80%は施工性の高さに優れているサイディング材といわれています。
サイディング材は製造時に工場で塗装を施されているため、現場で塗装作業を行う必要がないのがメリットです(※経年劣化によるメンテナンスは必要)。
木製建具工事
出典:https://www.fujijuken.co.jp/products/syuunou.php
木製建具工事とは木材でつくったドア、ふすま、障子などの建具を取り付ける工事を指します。外装工事、内装工事が完了したあとに施工されることが多いです。
全体の部屋数、木製建具の数にもよりますが、全体の4%~5%の工事費用がかかります。
近年は居間の入り口に木材を使ったデザインドアを取り入れるケースも増えており、この場合は通常の1.5倍~3倍ほどのコストがかかるといわれています。
ガラス(硝子:しょうし)工事
ガラス工事はリビング、寝室、洗面所、階段ホール、トイレ、キッチン、和室などに窓ガラスサッシを取り付けていきます。
また、窓ガラス取り付けのタイミングで、玄関ドアの設置も行われます。
左官・タイル工事
左官工事とはモルタル、壁土、漆喰、プラスターなどを壁や床に塗ることです。
外壁にタイル素材を使用したり、浴室やキッチンにタイルを貼りつけたりする際の下地づくりに必要です。
塗装工事
塗装工事は、住宅のデザイン性向上や建築資材を紫外線、雨から守る目的で行います。
モルタル壁などを希望する場合は、左官工事のあとに吹付け工法やローラー工法を用いて塗装を施していきます。
内装・クロス工事
内装・クロス工事は住宅内部の壁、床、天井にクロスを貼る工事です。また、現代の内装はクロス、壁紙が主流となっていますが、塗装仕上げを希望する方もいます。
このような場合はクロス貼りの代わりに、内装塗装を施します。
防水工事
防水工事は、主にベランダやバルコニーに施す工事であり、建物の寿命を延ばす目的があります。
防水性能が低下している箇所は、雨水が住宅内部に侵入しやすくなるため、劣化の原因にもなります。一般的に新築住宅にはアスファルト防水が施されることが多いです。
給水設備工事
給水設備工事は、キッチン、浴室、トイレ、洗面所など水回り関連の工事です。上水道配管や給水栓、バルブの設置などが主となります。
なお、配水管の引き込み工事などは別途費用として計上されるのが一般的です。
ガス設備工事
給湯をガスで行う場合は、ガス設備を設置する必要があります。
ガスには都市ガスとプロパンガス(LPガス)があり、都市ガスの場合はメーターを、プロパンガスの場合はメーターとボンベを設置します。
本体以外にかかる費用
注文住宅の本体価格は総額費用の約70%~80%です。つまり、本体価格以外に発生する費用が20%~30%ほどあるということです。
具体的には以下のような項目に費用がかかってきます。
- 解体工事費
- 地盤調査費用
- 地盤改良工事
- 電気工事(照明器具)
- 空調設備工事(エアコン)
- カーテン
- ソーラーパネル
- 外構工事
- 設計料
各項目をひとつずつチェックしていきましょう。
解体工事費
解体工事費は建て替えなどのときに発生する費用です。建て替えの場合は既存住宅を取り壊す必要があるため、足場設置、シート養生、重機搬入などの費用がかかってきます。
井戸や浄化槽がある場合は、これらにも処分費用が発生します。
地盤調査費用
地盤調査とは住宅を建てる際に、地盤の強度が一定の水準に達しているか否かを調べることです。地盤調査は法律ではっきりと「行わなければならない」と明記されているわけではありません。
しかし、建築基準法では地盤の強度によって、基礎工事の工法が定められています。
地盤調査を行わない限り、地盤の強度はわかりませんので、実質地盤調査は法律で義務づけられているといってもよいでしょう。
地盤改良工事
地盤調査の結果、地震などの災害時に液状化のリスクがあるなど、軟弱な地盤であることが判明した場合は地盤改良工事の費用がかかります。
地盤改良は、主に柱状改良工法、表層改良工法、鋼管杭(こうかんくい)工法の3つがあり、地盤が軟弱な部分の深さなどによって施工法が変わります。
一般的に軟弱地盤の部分が浅い場合は、表層改良や柱状改良の方法が、軟弱地盤の部分が深い場合は鋼管杭工法が用いられます。
地盤改良工事は施工法によって費用が変わるため、疑問点がある場合は見積もり時に質問しておくとよいでしょう。
電気工事(照明器具)
リビング、寝室など各部屋の照明器具、コンセントなどの設備工事になります。
電気工事には、インターホンや電話などの弱電設備(使用電圧が48V以下の設備)関連の工事も含まれています。
空調設備工事(エアコン)
空調設備工事は、主にエアコンや室外機の取り付け作業です。
また、ハウスメーカーや工務店によっては、24時間換気システムや空調ダクトといった換気設備の設置費用も含まれていることがあります。
カーテン
インテリア関連ではカーテン、カーテンレールといった費用が必要になります。住宅の費用に含まれていると思われがちですが、別途費用がかかります。
カーテンは前の住宅で使っていたものを希望する方もいますが、窓の大きさや数が異なるため、新しいものを購入するのが一般的です。
注意点としてはカーテンなどのインテリアにかかる費用は、住宅ローンに組み込めない可能性があることです。
そのため、インテリア関連の購入資金は別途確保しておいたほうが安心です。
ソーラーパネル
太陽光で発電を行うためのソーラーパネル(太陽光パネル)設置に伴う費用です。
一般的に100万円を超える費用がかかりますが、その後に発電した電気を電力会社に売ることで現金収入を得られるようになります。
外構工事
外構工事は門扉、塀、駐車場、庭、テラスなどエクステリア(屋外構造物)関連の施工となります。
外構工事は門扉や塀の有無、駐車場の種類(ガレージ、カーポート)などによって費用が大きく変わります。
特に駐車場は10万円~100万円と費用に開きがあるため、希望する駐車場タイプの価格はしっかりと確認しておくようにしましょう。
設計料
設計料は間取りや仕様の設計に伴う費用であり、総額費用の2%~5%前後が相場となります。なお、設計料の内訳には以下のようなものがあります。
- 直接人件費
- 特別経費
- 技術料
- 諸経費
設計料は設計の担当者にかかる直接人件費、出張料などの特別経費、設計の技術力や創造力の対価として支払われる技術料、その他諸経費で構成されるのが一般的です。
まとめ
今回は注文住宅の本体価格および、別途発生する費用について解説しました。注文住宅には建物本体にかかる費用と、それに付帯する費用が発生します。
そのため、注文住宅を建てるときは、予算オーバーにならないように本体価格以外にかかる費用もしっかりと把握しておきましょう。
また、ハウスメーカーや工務店によって見積書の内訳も変わりますので、疑問に感じた点は積極的に質問することも忘れないでください。
住宅は一生に一度の高価な買い物です。数千万円単位になるため、できれば値段を安くしたいものです。
実は値段の高い注文住宅ですが、建売よりも安く家を建てられる方法があるってご存知ですか?
建売でもいいですが、せっかくであれば自由に仕様や間取りを選べる注文住宅がいいですよね。
ただ、注文住宅は失敗してしまう方がほとんどです。夢のマイホームで後悔したくないですよね。
※お断り自由・完全無料