家を購入する際に、長期優良住宅というものが存在します。これは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」のことです。
長期優良住宅に認定されると、住宅ローンの金利や減税など優遇されます。
しかしながら、具体的に「長期優良住宅にはどのようなメリットやデメリットがあるのか」「どうすれば認定されるのか」わからない方は多いです。
そこで本記事では、長期優良住宅のメリットデメリットや認定の基準をわかりやすく解説します。
1.長期優良住宅とは
冒頭で述べたように「長期優良住宅とは、長い間良好な状態の家を保てると認めれた住宅」のことです。
認定基準を満たせば、さまざまなことが優遇されるため、長期優良住宅に認定されると税金や待遇が良くなります。
1-1.長期優良住宅の目的
しかしながら、なぜ、長期優良住宅は税金や金利などが優遇されたり推奨されたりするのでしょうか。
それは、「国が国民に対して長持ちする家を建てること」を推奨しているからです。これは、短期間の建て替えやリフォームなどを抑えることを目的としています。
つまり、「いいものを作り、きちんと手入れを行い、長く大切に住む家作りをしましょう」ということなのです。長期にわたって暮らしていくことができれば、住宅を解体する機会が減ります。そうすると、住宅の廃材の排出を減らすことができます。
また、長く住み続けられる家を建てることにより、建て替えにかかる費用も削減できるのです。
近年では、「住宅をなるべく長持ちさせよう」という考え方に変わってきています。あなたも長期優良住宅にすることで、環境や家計に優しい家を目指してはいかがでしょうか。
2.長期優良住宅の優遇やメリット

長期優良住宅に認定されると、金利の優遇や減税などいろいろなことがお得になります。
もし、あなたが長期優良住宅にするかどうかを悩んでいるのであれば、ここで解説するメリットに目を通しておくようにしましょう。
2-1.フラット35の金利が引き下げられる
長期優良住宅になると、住宅金融支援機構のフラット35という住宅ローンの金利が優遇されます。
住宅ローンの金利は、数%でも数百万円単位で利子の金額が変わるため、この差は大きいです。金利を優遇してもらった分の費用をキッチンのグレードをいいものにしたり、家族のために貯金したりできます。
2-2.住宅ローン控除の金額が増える
新築をローンで購入する場合、住宅ローン控除というものを受けられます。これは、所得税と住民税を控除してもらえるというものです。
住宅の種別 | 一般の住宅 | 長期優良住宅 |
---|---|---|
控除対象借入限度額 | 4,000万円(2,000万円) | 5,000万円(3,000万円) |
控除期間 | 10年間 | |
控除率 | 1.0% | |
最大控除額 | 400万円(200万円) | 500万円(300万円) |
年間控除額 | 40万円(20万円) | 50万円(30万円) |
一般住宅の場合、年間で40万円が10年間で最高400万円しか控除されることはありません。
しかし、長期優良住宅の場合、年間で50万円になり、最高500万円まで控除されるのです。この住宅ローン控除を上手に利用すれば、500万円の税金を減税できます。
この制度を上手に利用して、積極的に税金を控除しましょう。そして、その分を家族のために使ったり貯金したりするのもお勧めです。
2-3.住宅ローンを組まなくても優遇される:投資型減税
一見、住宅ローンを組まなければ恩恵がないように見えますが、長期優良住宅は、一括で家を購入した場合にも優遇される投資型減税があります。
投資型減税の制度は、基本的に現金で住宅を購入した方が対象になっているため、ローンを組まなくても所得税が控除されるのです。
ただし、具体的には長期優良住宅に加えて、低炭素住宅(酸化炭素の排出の抑制に資する建築物で、所管行政庁が認定を行った家のこと)が対象になります。必ず長期優良住宅であれば対象になるわけではないため、注意してください。
~平成26年3月 | 平成26年4月 ~平成31年6月 |
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---|---|---|
対象住宅 | ①長期優良住宅 | ①長期優良住宅 ②低炭素住宅 |
控除対象限度額 | 500万円 | 650万円 |
控除率、控除期間 | 10%、1年間 (控除しきれない部分は翌年度の所得税から控除) |
|
最大控除額 | 50万円 | 65万円 |
このとき、消費税が5%の際に契約した場合、2016年に建設したとしてもその消費税は当時のままです。そのため、5%の消費税率が適用される場合は、優良長期住宅、低炭素住宅問わず最大で500万円が上限になります。
2-4.登録免許税が減税される
新築の住宅を建設するにあたって、所有権保存登記が必要になります。これは、「所有権を初めてあなたのものにする」ことを認めてもらうものです。
このとき登記に税金が発生します。一般住宅の場合、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%になり、特例でも0.15%のままです。しかし、長期優良住宅の場合、0.1%に優遇されます。
たとえば、3,000万円の住宅の場合、o.4%だと計算式は以下のようになります。
3,000万円 × 0.4% = 12万円
しかし、長期優良住宅の場合は0.1%に優遇されるため、1/4の3万円の費用で済んでしまいます。また、中古住宅の場合も減税措置があります。
一般住宅で0.3%になり、長期優良住宅の場合は0.2%です。なお、マンションの場合は0.1%になります。ただし、平成30年3月31日までになるため、早めに購入するようにしましょう。
2-5.不動産所得税の減額
住宅購入時に不動産所得税が必要になります。この費用も長期優良住宅の場合、優遇されるのです。
一般住宅の場合、3%になり1,200万円が控除されます。長期優良住宅の場合は、これが1,300万円に増額されます。
減額の制度を上手に利用して、お得に注文住宅を購入するようにしましょう。
ただし、これには長期優良住宅以外にも床面積が50m2以上(戸建以外の貸家住宅は1戸当たり40m2以上)240m2以下などの条件があるため、注意が必要です。
詳しくは「三井不動産リアルティ」に記載してあるため、あなたの住宅が当てはまるのかを確認するようにしましょう。
2-6.固定資産税の減額が延長される
長期優良住宅に認定されると、固定資産税が減額されます。通常戸建ての場合、3年間固定資産税が1/2になります。
しかし、長期優良住宅の場合、その期間が5年に延長されます。
一方、一般的なマンションの場合は固定資産税が5年間、1/2になりますが、長期優良住宅の場合はさらに2年間延長されるのです。そのため、7年間減額されます。
長期優良住宅になると固定資産税が減税されるのです。夢のマイホームを購入するのであれば、認定されるような素晴らしい家を建設してみてはいかがでしょうか。
ただし、不動産所得税同様に土地面積などの条件があり、必ず長期優良住宅になれば固定資産税が減税されるわけではありません。なお、平成30年3月31日までの新築の住宅が対象になります。そのため、対象期間を間違えないようにしましょう。
2-7.贈与税の非課税枠が500万円増加
長期優良住宅は、贈与税の非課税枠が500万円増えています。条件などによって異なりますが、1,000~3,000万円の間が非課税のおおよその目安です。
両親や祖父母などからの住宅の購入費用を贈与された際、税金が条件の金額内であれば、非課税になります。
さらに詳しい内容は、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」のあらまし」に記載されています。詳細の条件が気になる方は、こちらにも目を通しておくようにしてください。
3.長期優良住宅のデメリット
以上で長期優良住宅のメリットを述べてきましたが、デメリットも存在します。具体的にどのような点になるのかを順番に解説します。
3-1.建設費用が高額になる
長期優良住宅の条件に当てはまるためには、後述する条件、耐震や省エネルギー対策を行わなければいけません。
当然、それらの条件に当てはまる住宅を建設すると、費用は2割程度高くなります。
このとき、「たくさん優遇されるからいいのでは」と思う方もいるかもしれません。しかし、減税や優遇されたとしても金銭面の部分だけでは、プラスになることは難しいです。
ただ、その後の生活の快適さやメンテナンスのことを考えると、その2割は決して高い金額ではありません。
せっかく夢のマイホームを建設するのであれば、こだわった長期優良住宅を建設してみてはいかがでしょうか。
3-2.申請に時間や手間がかかる
長期優良住宅に申請するには、時間や手間がかかってしまいます。
何も計画をせずにいい家を建設したとしても、必ずしも長期優良住宅に認定されるわけではありません。そのため、事前に工務店の設計などと、打ち合わせを入念に行う必要があるのです。
また、申請に関してもすぐに認められるわけではありません。一般的に、数週間から1カ月程度の期間を必要とします。これぐらいの期間がかかるということを覚えておいてください。
3-3.定期的な点検が必要
長期優良住宅は、認定をもらったらそれで終わりではありません。その後も、定期的に点検を行う必要があるのです。
このとき、「長期優良住宅建築等計画書」の維持保全計画を行わないと、最悪の場合認定の取り消しや補助金の返還をしなければいけません。
3-3-1.維持保全計画とは
維持保全計画とは、長期優良住宅の条件に満たしているのかを定期的(約10年)に点検を行いチェックすることです。
このとき、劣化状況に応じて補修や修繕を行わなければいけません。
長期優良住宅は、住み始めた後も建設当時の条件を満たしておく必要があります。そのため、点検や補修などを定期的に行う必要があることを把握しておいてください。
4.長期優良住宅の認定項目
長期優良住宅に認定されるには、いくつかの条件を満たさなければいけません。具体的にどのような項目があるのかをここで解説します。
4-1.構造躯体の劣化対策(耐久性能)
長期優良住宅は、数世代にわたって長く住み続けられる家でなくてはいけません。そのため、きちんとメンテナンスを行えば、100年住めるような家である必要があります。
このとき、100年住み続けられるために、強度な構造でなければいけません。
また、「床下や屋根裏に点検をする入口を設置すること」「一定以上の高さを確保すること」なども義務付けられています。
住宅の構造によって異なるのですが、鉄筋コンクリート造の場合、セメントに対する水の比率を少なくするか、鉄筋に対するコンクリートのかぶり(鉄筋を覆っているコンクリートの厚さ)を厚くすることが求められます。
なお、RC(鉄筋コンクリート造)と木造とでは条件が異なるため、それぞれに適した住宅を建設しなければいけないのです。
4-2.耐震性:地震に強い家
日本は地震が多い国であるため、耐震性には優れてなければいけません。揺れに強い構造でなければ、100年間住み続けることは不可能だからです。
万が一、大地震が発生したとしても、補修を行えば住み続けられるような強度を持つ住宅である必要があります。
せっかく建てた家が、地震で崩壊してしまえばひとたまりもありません。そうならないためにも、耐震性に優れた長期優良住宅を建設するようにしましょう。
具体的な基準としては、以下の通りです。
〔層間変形角による場合〕
・大規模地震時の地上部分の各階の安全限界変形の当該階の高さに対する割合をそれぞれ1/100以下(建築基準法レベルの場合は1/75以下)とすること。
〔地震に対する耐力による場合〕
・建築基準法レベルの1.25倍の地震力に対して倒壊しないこと。
〔免震建築物による場合〕
・住宅品確法に定める免震建築物であること。
国土交通省より引用
4-3.維持管理・更新の容易性
長期優良住宅は、メンテナンスも簡単に行えるようにしなければいけません。先ほど述べたように、定期的に点検が義務付けられているため、手入れが簡単に行えるような設計でなくてはいけません。
たとえば、簡単に配管を交換できるような仕組みにしておけば、水漏れなどが起こったとしてもすぐに対処することが可能です。
4-4.可変性:マンションなどの共同住宅の場合
長期優良住宅は、ライフスタイルの変化に応じて、間取りなどの変更ができるようにしておく必要があります。100年間住み続けるということを仮定すると、家族の人数が変化するかもしれません。
このとき、マンションのような共同住宅の場合、間取りを変えられるように、配管や配線などを配置できるように天井の高さを確保する必要があります。
後々のことを考えるととても便利になるので、そのような仕様にしておくようにしてください。
4-5.高齢者対策:バリアフリー性
100年間住み続けられる家ということは、今後あなたが高齢化した際に、バリアフリーのリフォームを行う可能性は十分に考えられます。
そのため、改修工事が簡単に行えるように、あらかじめ廊下などに必要なスペースや傾斜を確保しておく必要があります。
これであれば、いざバリアフリーのリフォームを行う際にとても楽です。住宅を建てる段階で、年齢を重ねることを考慮しておきましょう。
4-6.省エネルギー性
長期優良住宅には、省エネ法に規定する省エネルギー基準(平成11)に適合する必要があります。これは、断熱性能に優れた住宅にして、冷暖房費用を節約するというものです。
その後の冷暖房費用を節約できるため、長い目で見ればお得になります。後々のことを考えて、省エネの住宅を建てるようにしてください。
4-7.居住環境
長期優良住宅の場合、居住環境においても気を使わなければいけません。長く住むことを考えられているため、その地域の景観や環境などを乱してはいけないからです。
その地域によって、地区計画や景観計画、条例などの街並みの計画は異なります。そのため、協定の区域内にある場合は、そこのルールを守る必要があるのです。
たとえば、あなたも隣の家がとても派手な住宅では、不快に思うのではないでしょうか。実際に、京都などの景観が規制されているようなところでは、コンビニなども茶色です。
長期優良住宅である以上、周りの景観や街並みに適した外観でなければいけません。
4-8.住戸面積
快適に生活するためには、ある程度の広さを確保しなければいけません。その条件は、一戸建てと共同住宅によって異なります。以下がその居住面積です。
- 戸建て住宅:75㎡以上
- 共同住宅:55㎡以上
ただ、これはあくまでも基準でしかありません。その他にも、1回の床面積が40㎡以上なければいけないなどの規定があります。
さらに詳しい内容は、「国土交通省」に記載されているため、こちらにも目を通しておくようにしてください。
4-9.維持保全計画
丈夫な家だとしても、手入れを行わなければいけません。
そこで長期優良住宅は、あらかじめどのように維持保全するかの計画を立てる必要があります。あらかじめ計画を立てることで、家を効率よくメンテナンスできるのです。主な計画項目は以下になります。
- 構造耐力上主要な部分
- 雨水の浸入を防止する部分
- 給水・排水の設備について、点検の時期・内容を定めること
- 少なくとも10年ごとに点検を実施すること
この項目を踏まえた上で、維持保全計画を行いましょう。
5.認定してもらうための手順
長期優良住宅に認定してもらうには、いくつかの審査を行わなければいけません。具体的に、どのような手順になるのかをこの項で紹介します。
まず、登録住宅性能評価機関に技術的審査を依頼します。その後、適合証を配布されたら、所管行政庁に認定申請を行います。そして、認定されると晴れて通知書が交付され、長期優良住宅として認められるのです。

ただ、具体的な申請などは依頼する工務店が行ってくれるため、どのような長期優良住宅にしたいのかをしっかり伝えるようにしましょう。
「思っていたのと違ったものができてしまった」ということを防げるからです。
なお、長期優良住宅に関しての詳しい内容は、「長期優良住宅建築等計画の認定申請をされる皆様へ | 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」で詳しく解説しています。気になる方は、こちらにも目を通しておくようにしましょう。
6.長期優良住宅の申請のポイント
ここまで、長期優良住宅について解説してきましたが、申請にはいくつかのポイントがあります。
そこで、この項ではそれらをわかりやすく解説します。これから注文住宅を建てるのであれば、とても参考になるはずです。
6-1.着工前に申請を行う
長期優良住宅を建設するのであれば、必ず着工前に申請を行う必要があります。工事が始まってからでは間に合わない可能性があるからです。
また、設計の段階で「長期優良住宅にしたい」ということを伝えなければいけません。優良住宅に認められるためには、構造上の規定があるからです。これをクリアしなければ認定されません。
設計の段階で、長期優良住宅に認められる仕様の家を考える必要があります。手遅れになってしまわないために、早めに行動しておくようにしましょう。
6-2.長期優良住宅と建物の施工品質は無関係
長期優良住宅にすれば、必ずしもあなたの理想通りの素敵なマイホームが手に入るわけではありません。ハウスメーカーや工務店が建設する際に、申請の規定に合う間取りや構造にするための腕や技術が問われるからです。
長期優良住宅を何件も建設しているような住宅メーカーであれば、問題ありません。
しかし、すべてのハウスメーカーや工務店が、必ずしも長期優良住宅に詳しいわけではないのです。
先ほど述べたように、申請や設計などの段階で手間暇がかかります。そのため、優良住宅の建設に積極的な住宅メーカーばかりではありません。
そのような住宅メーカーにいくら依頼したとしても、熱心にあなたの話を聞いてくれる可能性は低いでしょう。
一生に一度の買い物だからこそ、あなたの家づくりをまるで「自分の住宅のように熱心で親身になって担当してくれる工務店」に依頼するようにしてください。
まとめ
長期優良住宅は、いい家を長持ちさせて快適に暮らすということが目的です。いろいろ申請の手間などがかかるため、面倒かもしれません。
しかし、認定されれば税金などの面が優遇されるため、面倒な手間以上のメリットがあるはずです。
せっかく夢のマイホームを建設するのであれば、長期優良住宅を目指した家づくりにしてはいかがでしょうか。
仮に100年間住み続けられると仮定すると、住宅ローンさえ返済してしまえば、あなたのお子さんなどは、メンテナンス費用だけで生活することが可能です。
長い目を見て、後々得するような注文住宅を建設するようにしましょう。
住宅は一生に一度の高価な買い物です。数千万円単位になるため、できれば値段を安くしたいものです。
実は値段の高い注文住宅ですが、建売よりも安く家を建てられる方法があるってご存知ですか?
建売でもいいですが、せっかくであれば自由に仕様や間取りを選べる注文住宅がいいですよね。
ただ、注文住宅は失敗してしまう方がほとんどです。夢のマイホームで後悔したくないですよね。
※お断り自由・完全無料