バルコニーやベランダには、居室の延長としてのサブスペース、あるいはデザイン的な要素としての役割があります。
そして、現在の住宅には戸建・マンションを問わず、何らかの形でバルコニーあるいはベランダが付いているのがほとんどでしょう。
しかし、せっかくのバルコニーやベランダも効果がなければ無駄なコストとなってしまいます。また、十分に検討して造られていない場合は、雨漏りなどの弊害を生むこともあります。
本記事では、バルコニーやベランダなどを設ける場合の注意点や上手な利用方法を、実例を挙げて紹介していきます。
これから新築を予定されている方の参考になれば幸いです。
「バルコニー」「ベランダ」の違い
出典:https://suumo.jp
居住者にとっては、バルコニーとベランダの違いがどうであれ、それらの使い勝手の良し悪しが気になりますよね。
建物や生活スタイルによっては、使いやすいのがバルコニーなのかベランダなのかは変わってきます。ですから、それらの種類や特徴を理解した上で、判断してください。
以下から、バルコニーを含めて同様の役割を持ったベランダやテラスなどについて、その違いや利用方法を紹介していきます。
バルコニー
上の参考図にあるように、バルコニーとは上に屋根や庇(ひさし)などの雨を遮るものがない状態のものをいいます。そして、下に居室がある場合をルーフバルコニーと呼んでいます。
バルコニーには、上に屋根(庇)がありませんから、開放感があると共に、直接光が期待でき、接する居室などにも光が入りやすくなります。
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上の写真は、戸建て住宅に設けられたバルコニーです。専用の屋根や庇がなく開放的ですが、雨天時は居室側の窓を締めておく必要があります。
上のバルコニーでは、出幅も少し大きめで椅子やテーブルも置けそうです。日常利用だけでなく、おしゃれに椅子やテーブルなどを置いてアレンジもできます。
しかし、手すり壁にプライバシーが気にならない程度の通風スリット(画像A)、もしくは一部でも手すり壁を低くするような工夫(画像B)があればもっと良かったのではないでしょうか。上のバルコニーでは、少し圧迫感がありますよね。
バルコニー画像A
出典:http://kiyo-yours.co.jp/item/category_02.html
バルコニー画像B
なお、バルコニーにはエアコンの室外機を置くためのスペースを確保しておく必要があります。
しかし、室外機が邪魔で思っていたよりもバルコニーのスペースが狭くなってしまうことも考えられます。
比較的コンパクトなデッキチェアーでも、その幅は50〜60cmほどあります。そして、その横を人が通るためにも40〜50cmは必要でしょう。
したがって、室外機置き場以外の日常利用とするためには、有効な出幅は少なくとも1メートル以上が必要です。
移動するのに苦労するような窮屈なバルコニーでは、やがて利用しなくなります。
ルーフバルコニー
バルコニーの下階に居室がある場合に、ルーフバルコニーと呼びます。一般的には、最上階やひな壇形式のマンションで見かけます。
戸建住宅でも1階の居室の上にある場合はルーフバルコニーと言えますが、戸建て住宅では単にバルコニーと呼ぶ方が多いでしょう。
また、ルーフバルコニーと呼ぶ場合は、一般的なバルコニーよりも面積が大きくなっているのが特徴です。
そのため、テーブルや椅子を置いての利用やアウトドア的な利用も可能で、家族のパブリックスペースとしても付加価値の高いものです。
たとえば、ホームパーティーやスピンバイク(自転車)などでのトレーニングが屋外気分で楽しめますのでおすすめです。
このくらいのバルコニー広さになると、壁手すりでも圧迫感がなく、程よい目隠しになっており、外部空間でありながらプライバシーも確保できています。
このルーフバルコニーでは、一部にガラス屋根がかかっていますので、雨天時でも利用できます。雨の日でも利用できるのは嬉しいですよね。
バルコニーやベランダには、当然ながら床に防水層があります。
その上にデッキ類などの保護床を敷くことは、防水層を紫外線や歩行傷から守り、劣化を低減させる効果があります。バルコニーを長く使うためには、必ずデッキ類で保護するようにしましょう。
ただし、デッキ類の隙間から入り込む砂や枯れ葉などの清掃ができる構造としておくことも必要です。
防水層の上にどのような保護床を敷くかは、清掃などのメンテナンスのしやすさも含めて、事前に技術者に相談しておくことをおすすめします。
いずれにしても、ルーフバルコニーの一番の良さは開放感があることでしょう。
視界を遮(さえぎ)るものが少なく天空を見渡せるスペースは、建物内にある最高クラスの屋外だと言えます。
ベランダ
出典:https://www.s-housing.jp/archives/103708
ベランダは、その設置場所や屋根のある構造などから、比較的面積が小さくなります。そのため、多くはエアコンの室外機置き場という実用と外観デザイン上のアクセントとしての設置がほとんどです。
しかし、ベランダには屋根があることから、掃き出し窓を大きく開け放って、採光や通風を有利にできる良さがあります。また、プライバシーには手すり壁で守ることもできます。
さらに、バルコニーほどではありませんが、少しは植木を置いて室内から緑を楽しみ季節を感じることもできます。
せっかく設置するベランダですから、エアコンの室外機置き場や外観のデザインアクセントだけで終わらせるのではなく、積極的に日常生活に生かすようにしましょう。
テラス
テラスとは、地面より少し高めに作った基本的には屋根のない床で、庭や居室からの利用が可能な屋外のパブリックスペースです。
テラスには、庭と居室をつなぐ役目があり、屋外での食事やティータイム、そして日光浴を楽しむ目的で造られます。
家族利用だけでなく、近所のお友達とのティータイムにも活用でき、室内ほど気遣うこともないことから、気軽な私設カフェテラスとすることができるでしょう。
写真のテラス前方には、まだ庭があるようですが、全面道路からの視線が気になる時には、植木やフェンスなどでの目隠しが必要でしょう。
ここで面白いと思うのは、テラスに段差をつけていることです。低い方のエリアは居室の延長としてのイメージが強く、高い方のエリアは、より屋外を感じるエリアとなっています。
これは、面白いアイデアですよね。ぜひ、参考にしてみてください。
ロジア
ロジアは聞き慣れない言葉かもしれません。ロジアは、最近増えてきているもので、上で紹介したテラスを壁で囲んだものと言えば、分かりやすいでしょう。
ロジアはイタリアの建築様式の一つです。ここでは詳細を省きますが、日本では建物に囲まれている中庭に対して、壁(塀)に囲まれているものをロジアと呼んでいます。
敷地にあまり余裕がなく全面道路との距離が近い場合でも、壁(塀)を建てることでプライバシーを気にせずに外部空間を楽しむことができます。
写真のロジアは2方の部屋と2方の壁(塀)に囲まれた状態のもので、中庭的な雰囲気もあります。壁(塀)のスリットには、通風効果だけでなく、外部とのほどよい距離感を持たせる効果もあります。
ロジアには、基本的に屋根がありませんので、天空からの強い日差しを避けたい時などはパラソルやオーニングなどと併用するといいでしょう。
ロジアの魅力は、屋外でありながら室内の安全性とプライバシーがあるということでしょう。
そのため、小さな子ども達を遊ばせておいても安心で、ロジアに面した住居部分を開放していてもプライバシーを気にする必要がありません。
なお、ロジアには屋根がありませんので、建ぺい率(建築面積/敷地面積)や容積率(延床面積/敷地面積)に制限対象にならない利点もあります。
敷地や庭に余裕がなく隣地や前面道路との距離が少ない場合、それらの境界近くに壁(塀)を設けロジアとすることで、逆に開放感のある空間を作ることができます。
真似したい!おしゃれなバルコニーの事例集
上でバルコニーやベランダなどの特徴と利用形態を紹介してきました。いずれも外部空間で、設置の仕方や利用方法によっては、生活スタイルのバリエーションを増やしてくれるものです。
せっかくのバルコニー・ベランダです。単にエアコンの室外機置き場、あるいは物干し場だけにするのは避けたいものです。
おしゃれな照明のバルコニー
出典:55+ Apartment Balcony Decorating Ideas | Multipurpose furniture, Balconies and Spaces
ウッド基調でコーディネートされ、照明に薄明かりを楽しむ工夫が見られます。
これから紹介するバルコニーに共通の問題ですが、屋根のない空間を楽しむためには、雨にどのように対処するかを考えておかなければなりません。
上の写真のクッションやマットの詳細は分かりませんが、クッション本体を完全防水にして、カバー部分に撥水処理を施した屋外用のものがありますので、おすすめです。
いずれにしても、比較的雨の多い日本では雨対策を考慮していないと、劣化・老朽の進み方が早くなり、やがては利用頻度が少なくなってしまいます。
それでは、もったいないですよね。
植物がおしゃれなバルコニー
出典:Exceptionally beautiful duplex apartment in Sweden | Apartments, Staircases and House
植木の大きなソテツがシンボルになっているバルコニーです。それほど広くはありませんが、個室(寝室)のサブスペースとしての活用を計画したものでしょう。
限られたスペースを上手に利用していますので、大きなバルコニーを設置できない場合の参考になりますよね。
おしゃれな工夫で、毎日でも利用したくなる可愛いバルコニーです。掃き出し窓を開け放し、寝室とバルコニーとで会話が交わされる姿が想像できます。
海外リゾートのようなバルコニー
まさに、リゾート地の別荘のバルコニーで豪華ですね。このようなバルコニーを維持・管理するためには、相応の手間とコストが掛かります。
これくらいの広さになると、パーティーも可能でしょう。
でも、こういった広々バルコニーは憧れますよね。広いバルコニーが欲しい方は、こういったリゾート風にしてみるのも良いかもしれません。
ウッドバルコニー
出典:Mobilier design tendances et minéraux aix en provence | Extérieur | Pinterest
バルコニーに高低差を設けた庭のような造りで、見方を変えると建物で使えなくなった敷地の一部を、バルコニーで取り戻しているとも言えます。
レイアウトされている家具は雨に考慮したものですから、日々の天気を気にしなくても良い利点があります。
ここに、日除け用のオーニングやパラソルを加えてもいいでしょう。
まとめ
バルコニーには、居室のサブスペースとしての役割があり、その使い方のソフト部分が最も大きな要素になります。
また、個室専用のプライベートなものと、家族が集うパブリックなものとがあり、それぞれの用途に合わせた広さとコーディネートが必要になります。
上手に計画されたバルコニーは日常生活を豊かにしてくれます。そのため、新築する際には、希望するバルコニーの利用イメージを明確に持っておくようにしましょう。
造りっぱなしで、たまにしか利用する機会のないバルコニーではコストパフォーマンスが悪すぎます。上で紹介した実例が、生活にバリエーションを与え、豊かにするようなヒントになれば幸いです。
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