一条工務店の住宅構造には、木造枠組壁工法(2✕6)と木造軸組工法の2種類があります。
今回紹介する「 グラン・セゾン 」は、木造軸組工法の最高グレード商品で、枠組壁工法の同グレードの「グラン・スマート」と両雄を争うポジションにあります。
本記事では、2種類の工法とそれぞれの最高グレード商品から、あえて木造軸組工法の「 グランセゾン 」を選ぶ理由は何かを検証していきます。
合わせて、同社の軸組工法の他商品との比較も行いますので、参考にしてください。
グラン・セゾンとグラン・スマート、何が違う?
画像の左がグラン・スマート、右がグラン・セゾンですが、外観上では特に大きく異なるイメージを感じません。
モデル上では、グランセゾンの軒の出が大きく繊細さを感じますが、同社のHP上では軒の出については紹介されていませんので、プラン上のものでしょう。
バルコニーの有無や片流れ屋根の見え方などは、ユーザー希望やプランにもよりますから両商品の特徴とは言えないですね。なお、右側グラン・セゾンの水平に見える屋根も片流れ屋根です。
では、何が違うのか。詳しく見ていきましょう。
住宅の基本性能に違いはあるか?
住宅に必要な基本性能は、耐震性能と省エネ・断熱性能です。
軸組工法と枠組壁工法では駆体構造が異なるのですから、基本性能も異なるはずですが、グラン・セゾンとグラン・スマートでは、どのようになっているのか、見てみましょう。
住宅性能 | グランセゾン | グランスマート |
耐震性能 | 全棟耐震等級3 | |
断熱性能 | UA値:0.38W/㎡・K | UA値:0.25W/㎡・K |
地震の多い日本の現在の新築住宅では、耐震性能を最高の3等級とするのが基本となっていますが、一条工務店では、全棟に必須条件としています。
UA値とは、家の表面(外皮)から逃げていく熱量で、断熱性能が高くなるほど数値が小さくなります。そして、両商品共に、ZEH基準をクリアする性能を標準仕様としています。
住宅の基本性能を業界のトップレベルとしているのは心強いですが、断熱性能でグラン・スマートが上なのが少し気になりますね。
設計自由度が高い軸組工法の「 グラン・セゾン 」
設計の自由度は木造軸組工法の方が高い、と言うのが一般的な評価です。これは、建築基準法の枠組壁工法の制限では、耐力壁の総量だけでなく、配置まで細かく決められているからです。
例えば、枠組壁工法では家の角には90cm以上の耐力壁を造る、あるいは窓などの開口部は壁長さの1/4以下かつ最大幅4m以下、と言うような制限があります。
そのような制限は、軸組工法にはありません。ただし、軸組工法でも総量さえ満足させれば配置は関係ない、と言うことではなく、配置も十分に検討しておかなければ耐震性能等級3は取得できません。
つまり、軸組工法のグラン・セゾンでは、十分に計算・検討して全棟を耐震性能等級3としているのです。
グラン・セゾンの本体価格相場
グラン・セゾンの本体価格相場は、75〜85万円/坪とされています。グラン・スマートとほぼ同じ、あるいは少し安い価格設定になっており、業界全般ではミドルクラスになります。
この価格帯の他社の軸組工法商品では、積水ハウスのシャーウッド(〜85万円〜/坪)や大和ハウスのグランウッド(65〜100万円/坪)があります。
積水ハウス:シャーウッド
大和ハウス:XEVO グランウッド
上の住宅は、共に超大手住宅メーカーの木造軸組商品で、いずれにも邸宅感があり、超大手らしい雰囲気があります。
耐震性能は最高等級3が基本で、断熱性能もZEH基準をクリアするものですから、いずれもグラン・セゾンとほぼ同等だと思います。
しかし、後述の全館床暖房や24時間換気システムのロスガード90などの標準仕様を考慮すると、グラン・セゾンの方がコスパが高いといえるでしょう。
グラン・セゾンの標準仕様
グラン・セゾンの標準仕様をグランスマートとの比較を交えながら紹介しましょう。
駆体構造・断熱仕様
グラン・セゾンとグラン・スマートの大きな違いは、軸組工法と枠組壁工法によるものです。
標準仕様 | グラン・セゾン | グランスマート | |
構造 | 基礎 | 鉄筋コンクリート布基礎+防湿土間コンクリート |
|
上部構造 | 木造軸組工法(モノコック構造) | 木造枠組壁工法(2✕6) | |
耐久性/耐火性 | 長期優良住宅/省令準耐火 |
||
断熱性能 | 断熱構法 | IーHEAD構法 | 外内ダブル断熱構法 |
断熱性能等級 | 地域区分に対応 | 全地域統一仕様で対応 | |
窓サッシ | 一般窓・勝手口 | 高性能樹脂サッシ(トリプル硝子・アルゴンガス充填・Low-E硝子) |
上表で、軸組工法のモノコック構造とは、柱や梁で構成された床・壁・天井に構造用合板を張り、6面体構造としたもので、枠組壁工法の良さを取り入れたものです。
なお、一条工務店の軸組工法では、一般的な柱サイズが105mm角に対して120mm角としており、壁の厚さも120mmとなります。
柱サイズの大きさは、数値として耐震性能には現れませんが、モノコック構造を含めて耐震強度が向上するのは間違いありません。
基礎:布基礎(全商品共通)
一条工務店の標準基礎は、工法・商品グレードにかかわらず、布基礎+防湿土間コンクリートとしています。
地耐力の調査結果で、地耐力が30Kn/㎡を大きく上回る場合は標準基礎の布基礎で大丈夫ですが、ギリギリや下回る場合はオプションのベタ基礎や杭基礎が必要となります。
なお、同社の標準仕様の布基礎は、建築基準法で決められている寸法や鉄筋量を上回るもので、より安全率を確保した構造となっています。
断熱関係:高性能EPS1号相当断熱材(I-HEAD構法)
EPSとは、発泡プラスチック系断熱材の略称で、一般的なグラスウールの1.2倍の断熱性能があります。
このEPSを上で紹介した柱サイズ120mmの壁内に充填し、図のように天井・床に同じEPSをそれぞれに応じた厚みで敷き込んでいます。
枠組壁工法の外内ダブル断熱構法では、省エネ地域区分にかかわらず同じ断熱仕様ですが、軸組工法ではⅡ地域とⅢ〜Ⅴ地域で床の断熱仕様を変えています。
これは、省エネの地域区分に応じたZEH基準に対応したものですが、全体として枠組壁工法の断熱性能より少し劣っています。
参考情報ですが、枠組壁工法のダブル断熱性能は、ZEH基準の断熱性能等級5を超える等級6に相当するものです。そして、グラン・スマートとアイ・スマートを対象にして、2023年から最高等級7にも対応可としています。
なぜ、枠組壁工法の2商品だけが対象なのかは不明ですが、いずれにしても主力商品に力を注いでいると言うことでしょう。これは、軸組工法商品にとってはハンディキャップとなりますね。
開口部(窓関係):樹脂枠+トリプルガラスのサッシ
窓サッシは、工法・商品グレードにかかわらず共通で、アルミと樹脂の複合サッシ枠よりも断熱性能の高い樹脂枠サッシ+トリプルガラスを標準としています。
そして、室内側は防犯合せガラスとし、室内側にはハニカムシェードが標準で付いています。ハニカムシェードとは、カーテンやブランドの代わりとなるもので、より断熱や遮熱に効果があるものです。
なお、キッチンと浴室の窓はブラインド内蔵型のトリプルカラス樹脂枠サッシとなっています。とにかく、同社の断熱に対するこだわりは徹底していますね。
外壁・内装仕様
グラン・セゾンの標準外壁はハイドロテクトタイルで、グラン・スマートと同じで、アイ・スマートなどで標準仕様としている石目調ボーダータイルよりもグレードの高いものです。
ハイドロテクトタイル
ハイドロテクトタイルには、光と雨で汚れを落とすセルフクリーン機能があり、一般的なタイルよりも、メンテナンスや耐久性に優れています。
アイスマートの石目調ボーダータイルがホワイト1色に対して5色から選ぶ事ができるため、オプションでハイドロテクトタイルを選ぶユーザーが多いようです。
フローリング:モクリア
モクリア:ホワイト・ウォールナット
標準仕様のモクリアは、合板にシートを貼り付けた複合板ですが、一般的なものに比べて彫りが深く、無垢材のような感触と耐久性を両立させています。
収納仕様
一条工務店の特徴の一つに、収納スペースが多い、というのがあり、部屋ごとのクローゼットだけでなく、ウォークインクローゼットも標準でプランに組み込まれています。
システムクローゼット
一条工務店のクローゼットでは、ハンガーパイプだけでなく、収納物の種類に応じたシステム収納としています。
ハンガーを手前に引き出せるスライドハンガー、上下2段のダブルハンガー、そして小物入れや衣装ケースなど、使いやすさと収納量にこだわった内容ですね。
シューズボックス
シューズボックスのカウンターは、天然御影石の豪華な仕上がりになっており、回転式の靴収納やベビーカーを収納できるタイプも用意されています。
扉裏には姿見ができるミラーが付いており、傘や小物を引っ掛けられるアクセサリーをマグネットで取り付けることもできます。
水回り設備仕様
水回り設備も、グラン・セゾンとグラン・スマートは同じ一条工務店の最高グレードであるグレイスシリーズを標準としています。
グレイスキッチン
一条工務店:グレイスキッチン(ダーク)
グレイスキッチンに採用されているグラリオカウンターとは、天然石を有機ガラスと雲母で忠実に再現したもので、傷に強く高級感に溢れたカウンタートップです。
システムキッチン本体は、ダイニング側がカップボード風になっているタイプで、高級家具のような雰囲気があります。
グレイスキッチンの表面仕上は、彫りの深い木目調の重厚感と格式を感じさせるもので、4色が用意されている。
一条工務店:スマートキッチン
一方で、高級家具なような雰囲気には圧迫感がある、あるいはカウンターバリエーションが少ないなどから、グレードダウンしてバリエーションの多いスマートシリーズを選ぶユーザーも多くいるようです。
バスルーム
一条工務店:バスユニット(アーバン)
浴槽は、身体を伸ばせるゆとりの1.6Mサイズで、ピュアホワイトとピュアブラックの2種類が用意されており、カラーコディネートは4種類となっています。
一条工務店のユニットバスで特徴的なのは、ミラー・タオル掛・シャワーフックなどが着脱式のマグネットタイプで、身長や使い勝手に合わせて変更することができます。
ユーザーが後付でマグネット式のアクセサリーを取り付けるのは聞きますが、メーカーが始めからマグネット式としているのは他に知りません。
この固定観念にとらわれない考え方も、一条工務店の魅力かもしれません。
洗面化粧台
汚れにくく掃除のし易いフラット洗面台で、壁付きのシャワー水栓も使いやすそうですね。
ドレッサー収納は、一条工務店の特徴である大収納量のもので、プッシュ開閉扉、耐震ロック機能、フルスライド式キャビネットなど、安全と使いやすさに配慮されています。
空気・温湿度調整設備仕様
空気環境設備は、グラン・スマートとほぼ同じ内容ですが、グラン・セゾンでは24時間換気システムのロスガード90に湿度調整機能はついていません。
24時間換気システム:ロスガード90
一条工務店:ロスガード90
ロスガード90は、熱交換型の24時間換気システムで、室内の暖まった、あるいは冷やした空気を給排気する際に、最大90%の熱交換するもので、省エネ性能に優れています。
また、給気の際に、花粉・カビ・黄砂・PM2.5などの有害物質を最小限にするフィルターが付いています。
全館床暖房
一条工務店といえば全館床暖房、というほど知られています。図のように、玄関や浴室まで100%暖房する徹底ぶりです。
全館床暖房や熱交換型24時間換気システムを標準仕様としていることが、一条工務店、そしてグラン・セゾンのコスパを高めている大きな要因です。
軸組工法グループの中で、選ぶとしたら
ここまで、軸組工法のグラン・セゾンを枠組壁工法のグラン・スマートとの比較を交えながら、紹介してきました。
しかし、ほとんど見分けがつかない外観や同じ仕様の内装と住設備で、あえてグラン・セゾン選ぶ理由は残念ながら見当たりません。
むしろ、より断熱性能の高いグラン・スマートに軍配が上がるように思います。
一方、一条工務店の軸組工法の他商品には、セゾン、セゾンA、ブリアール、百年があります。
一条工務店:セゾン
それらは、グラン・セゾンやグラン・スマートとは明らかに異なるコンセプトと魅力的な外観イメージを持っています。
伝統的な屋根形状と外観イメージ、軸組工法にこだわるなら、それらの中から選ぶのが正解ではないでしょうか。
まとめ
一条工務店の木造軸組工法の最高グレード「 グラン・セゾン 」は、業界最高レベルの性能と上質なデザインを融合させた商品です。
しかし、枠組壁工法のグラン・スマートと同様の外観イメージや同じ内外装、そして住設備などから、あえてグラン・セゾンを選ぶ理由は見つかりませんでした。
軸組工法特有の間取りの自由度が高いということはありますが、総合的にはグラン・スマートの方に優位性を感じます。
軸組工法の商品を選ぶなら、枠組壁工法の商品とは明らかに外観イメージが異なるセゾンやブリアールなどの選択が正解だと思います。
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