どんな業界にも競い合うメーカーがあります。競合メーカーがあることで、お互いが切磋琢磨し、商品に反映され、より良い性能や品質になっていくのです。
注文住宅の「 xevoΣ 」で知られる大和ハウスの競合メーカーというと、真っ先に思い浮かぶのが積水ハウスでしょう。企業規模、戸建て住宅着工戸数、売上、どれをとっても業界の両雄です。
本記事は、「 xevoΣ(ジーヴォシグマ)」の標準仕様の紹介ですが、同商品の知識をより深めるための比較対象として、積水ハウスの「 イズ・ロイエ 」を選びました。
本体工事価格の比較
大和ハウス:xevoΣ
積水ハウス:イズ・ロイエ
画像は、大和ハウスのxevoΣ、積水ハウスのイズ・ロイエのそれぞれの代表的な外観で、風格と高級感を感じさせます。いずれも、寄棟屋根で全く鉄骨造を感じさせないデザインで、木造住宅といわれても信じてしまうほどですね。
建築本体価格(税込み) | 備考 | |
xevoΣ | 96万円〜/坪 | ハイグレードタイプ |
イズ・ロイエ | 95万円〜/坪 |
xevoΣの2014年のプレス発表では、ハイグレードタイプの標準仕様で74万円〜/坪(税込み)としています。同社の2022年までの値上がり率は30%ほどですから、現在価格は96万円ほどになっているでしょう。
xevoΣには、スタンダードタイプもあり、発表時は67.7万円〜/坪となっています。同様に値上がり率を考慮すると90万円〜/ほどになります。
他方のイズ・ロイエの2017年のプレス発表では、66万円〜/坪(税抜き)の本体価格としています。近年の値上がりと消費税を含めると、95万円〜/坪になると思われます。
価格帯では、ほぼ同じと考えていいですね。まさに、互角のライバル同士といえます。
xevoΣの基本構造(耐震性能と断熱性能)
住宅に必要な基本性能は、耐震性能と断熱性能です。しかし、例えば耐震等級が最高の等級3で同じでも、それを支える構造や工法はハウスメーカーによって異なります。
特に、大和ハウスや積水ハウスのような大手のハウスメーカーでは、独自の構造や工法を開発しており、それぞれに特色があります。
構造躯体(基礎、上部構造)
まずは、両社の基礎と上部構造を下の表で示しておきます。
xevoΣ | イズ・ロイエ | |
基礎 | シームレス布基礎 | 一体打ち布基礎 |
上部構造 | 持続型耐震構造 | ダイナミックフレームシステム |
制震装置 | D-NΣQST(ディーネクスト) | シーカス |
聞き慣れない名称が多いですね。以下より、順を追ってそれぞれの詳細を紹介していきましょう。
基礎はいずれも布基礎
大和ハウス:シームレス布基礎
積水ハウス:一体打ち布基礎
画像のように、同じ布基礎でも両社では基礎の底盤(ベース)の形状が異なります。さらに、大和ハウスでは底盤に鉄筋が入っているのに、積水の底盤には鉄筋がありません。
もちろん、研究や実験にもとづくものでしょうが、直感的には大和ハウスの布基礎の方に安心感があります。
布基礎は、底盤部分と立ち上がり部分とを分けてコンクリートを流し込む施工方法が一般的です。つまり、2度に分けてコンクリートを打設する分けです。この時、ベース部分と立ち上がり部分が完全に密着しない場合があります。
これを避けるために、両社ともに一度打ちとし、大和ハウスでは「シームレス」といい、積水ハウスでは「一体打ち」と呼んでいるのです。意味合いは同じです。
躯体はいずれも軽量鉄骨軸組構造が基本
大和ハウス:持続型耐震構造
積水ハウス:ダイナミックフレーム
両社ともに開発名をつけて、それぞれの独自性を盛り込んではいますが、基本は同じ軽量鉄骨軸組造です。
軽量鉄骨とは鋼材の肉厚が6mm未満のものをいい、重量鉄骨とは6mm以上のものをいいます。
それぞれに研究・開発された柱や梁で、大和ハウスでは最大開口幅7.1m、天井高2.72を実現しており、積水ハウスでは最大開口幅7m、天井高2.7mとしています。
数値上は大和ハウスが勝っていますが、現実問題としては、それらの差を気にするユーザーはいないでしょう。
オリジナル制震装置
大和ハウス:D-NΣQST 積水ハウス:シーカス
制震装置を最初に商品発表したのは、ミサワホームです。以来、各ハウスメーカーが競うように自社開発し、自社の注文住宅の標準仕様に組み込むようになりました。
大和ハウスのD-NΣQST(ディーネクスト)の減衰率(揺れを吸収する比率)は公表されていませんが、実大実験で阪神淡路大震災(震度7)の揺れにも連続して耐え、初期の耐震性能を失わないとしています。
積水ハウスのシーカスの減衰率は、変形量を1/2に抑えるもので、同様に震度7クラスの地震にも連続して耐える効果があるとしています。
D-NΣQSTがエネルギーを吸収して揺れを抑える仕組みは、Σ形の断面によるものとしていますが、一般の方には分かりづらいかもしれません。一方、積水ハウスのシーカスはわかりやすい形状・仕組みですね。
防錆性能
鉄骨造で気になるのが、サビの問題です。ですが、最近の車でもわかるように、近年の防錆技術は格段に向上しており、適切に防錆処理されて極端に悪い使用環境でなければ、簡単にサビて腐食につながることはありません。
大和ハウス:防錆4重処理
積水ハウス:防錆3重処理
図でわかるように、大和ハウスと積水ハウスの防錆処理は、1層目から3層目までは、ほぼ同じです。違いは、大和ハウスでは4層目に仕上げ塗装を施していることです。
仕上げ塗装に大きな防錆効果は期待できませんが、現場などで軽微なキズが着いても肝心の防錆塗装部分を守れる良さがあります。
両社ともに、防錆処理は1階の柱脚部分のみとされており、大和ハウスでは75年以上の耐用年数とし、積水ハウスでは100年の耐用年数と公表しています。
断熱構造(材種、工法)
住宅基本性能の2つ目は、断熱性能です。特に、鉄骨の場合は、熱橋や結露によるサビの問題もあり、重要なポイントになります。
xevoΣ | イズ・ロイエ | |
床 | 床下断熱(根太レス) | 床下断熱 |
外壁 | 充填断熱+外張り断熱 | 充填断熱+内張り断熱 |
屋根 | 天井断熱 | 天井断熱 |
窓 | アルミ樹脂複合サッシ | アルミ樹脂複合サッシ |
壁断熱 充填断熱+外断熱 vs 充填断熱+内断熱
大和ハウス:充填断熱+外張り断熱
外壁にグラスウールを充填し、外側にグラスウールとグラスウールボードを張っている2重構造となっています。
熱橋対策としては、柱の外側の外壁下地材との間にグラスウール層を設けています。
積水ハウス:断熱+内張り断熱
外壁にグラスウールを充填し、室内側にもグラスウールを張る構造で、大和ハウスと同じ2重構造ですが、断熱材を外壁側に追加するか室内側に追加するかの違いがあります。
同じ2重構造の断熱でも、外側の追加断熱と内側の追加断熱では、どちらが効果的かは断定できませんが、一般的には住宅全体の断熱効果では外断熱が有利で、熱橋対策としては内断熱となるでしょう。
なお、内断熱の場合は、室内スペースが犠牲(狭くなる)になる懸念があります。
床断熱
大和ハウス:大引施工と断熱材施工
積水ハウス:床下断熱材
大和ハウスの床断熱は、大引間に断熱材が入り、その上に24mm厚の構造用合板を張る根太レス施工となっています。他方の積水ハウスでは、大引の上に根太を施工し、根太間にグラスウールが入いる施工となっています。ただし、両社ともに、断熱材を含めた床下地材はパネル化されており、優劣つけがたいものです。
以前は、大和ハウスの1階の床断熱には基礎断熱を採用していましたが、2023年4月からは床下断熱へと仕様変更になっています。
・充填断熱:外壁軸組内に断熱材を入れる方法
・外張り断熱:外壁軸組の外側に断熱材を張る方法
・内張り断熱:外壁軸組の室内側に断熱材を張る方法
・小屋裏断熱:天井断熱とほぼ同義語で天井の上に断熱材を敷き込む方法
・屋根断熱:小屋裏スペースを利用する際に、屋根の裏側に断熱材を張る方法
両社ともに、研究や実験をもとに各部位の断熱の仕様や施工方法を決めているでしょうから、地域(区分)ごとに求められている省エネやZEHの基準値に適合している限りは、断熱性能に明確な優劣がでるものではありません。
地域ごとの区分とは、地域の気候に合わせて、より断熱が必要な地域とそうでない地域を区域分けしたもので、全国を8区域に分けています。一般的には、エリアの大きい5地域と6地域に求められる断熱性能を標準仕様としているところがほとんどです。
両社の大きな違いは、外壁の外断熱か内断熱かになります。そして、一般的には外断熱が有利とされています。
外装比較
冒頭で紹介した両社の外観は、ともに風格があり高級感のあるものでした。では、それらを感じさせる屋根と外壁にはどのような材料が採用されているのか、比較してみましょう。
大和ハウス:DXウォール(34mm)
積水ハウス:ダインコンクリート(55mm)
外壁材の高級感では、厚みがあり彫りの深いダインコンクリートの方が上でしょう。ただし、これも先の外断熱か内断熱かに、少なからず関係していると推測しています。
外断熱の場合、外壁材を支える柱などの構造部材との距離が遠くなり、あまり外壁材を厚くできない事情があるのではないか。その点、内断熱ではほぼダイレクトに構造材に取り付けることができます。(先の外壁断熱材の画像を参照)
このように、ある部分の利点は他の部分では不利になることがあり、各社ともに総合的なバランスで仕様や施工方法を決めているのです。
なお、耐候性を決定する塗装は、ともに光触媒塗装を採用しており、積水ハウスでは高耐久目地の採用と合わせて、メンテナンスサイクルを30年としています。
大和ハウスでも、目地に高耐久シーリングを採用しており、30年以上の耐久性があるとしています。
xevoΣ | イズ・ロイエ | |
屋根 | 軽量セメント瓦、化粧スレート、FRC | 陶器瓦 |
外壁 | DXウォール(34mm)+光触媒塗装 | ダインコンクリート(55mm) |
ケイミュー:ROOGA鉄平
大和ハウスの屋根は3種類から選べますが、おすすめは厚みがあり高級感のある軽量セメント瓦(ケイミュー:ROOGA鉄平)です。そして、積水ハウスでは陶器瓦が標準となっています。
水回り設備比較
住宅の基本性能は耐震性と断熱性能だと幾度も述べてきましたが、日常生活でもっとも使用頻度が高く、満足度に影響するのが水回りの住宅設備でしょう。
xevoΣ | イズ・ロイエ | |
システムキッチン | パナソニック(ラクシーナ)
リクシル(リシェルSI) |
パナソニック(ラクシーナ)
クリナップ(ステディア) |
浴室 | パナソニック(オフローラ)
リクシル(リデア) |
積水ホームテクノ(バスサルーン、エスコート) |
トイレ | リクシル(アメージュZ)
TOTO(ピュアレスト) |
リクシル(サティス、アメージュ)
TOTO(ネオレスト、ピュアレスト) |
洗面 | TOTO(オクターブ)
リクシル(エルシー) |
パナソニック(ウツクシーズ)
リクシル(エルシー) |
両社ともに、よく似たメーカー・商品です。積水ハウスの浴室がグループ会社の製品としているのは仕方がありませんね。
表の各設備メーカーや商品は、支店や契約・着工年度によって異なる場合があります。しかし、選ばれるグレードはミドルクラス以上のもので、両社の主力商品にふさわしいものになっています。
換気システム比較
両社の換気システムは、排気を機械(換気扇)で行い、吸気を自然(給気口)で行う第三種換気システムが標準仕様となっています。
大和ハウス:風ナビES
空気清浄機と24時間換気を組み合わせ、家全体の空気環境を改善します。区分的には第三種換気システムとなりますが、上図のように季節によって給気側も機械式になるハイブリッド給気口が特徴です。冬の冷気を常時給気するのではなく、センサーによって自動的に機械給気するものです。
上位システムには、花粉やウィルスなどの微小粒子を取り除くHEPAフィルター、菌・ウィルス・アレルギー物質を抑制するナノイ−が組み込まれている風ナビef24があります。
積水ハウス:エアキス
エアキスは、室内の化学物質の抑制と空気清浄で、空気環境を改善してくれます。標準仕様で化学物質を抑制してくれる機能があるのは嬉しいですね。
いずれにしても、両社ともに、上記以外の換気システムがあり、それぞれの目的に応じたシステムを選択することができます。
ZEH実施率比較
大和ハウス:SMAECO
xevoΣ、イズ・ロイエともに、ZEH(ゼロ・エネルギー住宅)は標準仕様とはなっておらず、いずれもZEH対応可能としています。
しかし、現在の注文住宅ではZEHを検討される方がほとんどだと思います。その際、実施件数の実績は、大きな判断材料になります。
2021年の大和ハウスの戸建て注文住宅のZEH実施比率は60%ほどで、積水ハウスの90%を大きく下回っています。
そのため、大和ハウスでは2025年までには標準仕様として80%、2026年には90%にすると公表しています。(日刊工業新聞2022年4月14日)
大和ハウスのZEH関連の技術には問題ありませんから、実施率を上げたい同社でZEHを希望するのは、ある意味で狙い目かもしれません。
まとめ
本記事では、大和ハウスの注文住宅「 xevoΣ 」を紹介する目的で、あえて注文住宅トップの積水ハウスの「 イズ・ロイエ 」と比較してみました。
比較結果をどのように受け取るかは皆さまにお任せしますが、本記事的には甲乙つけがたい印象をもちます。
一方で、安定した技術・施工方法の大和ハウスに対して、オリジナル性を前面にだしている積水ハウスの印象もあります。
最終的な決定材料には、大和ハウスの外断熱かもしれませんし、積水ハウスのダインコンクリートかもしれません。
いずれにしても、甲乙つけがたい両社の「 xevoΣ 」と「 イズ・ロイエ 」のいずれを選んでも大きな失敗にはならないことは本記事の紹介で理解していただけたと思います。
住宅は一生に一度の高価な買い物です。数千万円単位になるため、できれば値段を安くしたいものです。
実は値段の高い注文住宅ですが、建売よりも安く家を建てられる方法があるってご存知ですか?
建売でもいいですが、せっかくであれば自由に仕様や間取りを選べる注文住宅がいいですよね。
ただ、注文住宅は失敗してしまう方がほとんどです。夢のマイホームで後悔したくないですよね。
※お断り自由・完全無料