例えば、積水ハウスや住友林業などの超大手住宅メーカーと比べて、一条工務店のイメージは、どれくらいのポジションにあるのでしょうか。
一条工務店は住宅業界では良く知られているメーカーですが、超大手住宅メーカーの事業規模や知名度ほどではなく、ミドルクラス、というのが一般的な認識でしょう。
ところが、毎年の戸建て住宅の販売戸数ランキング(売上ではない)では、その超大手住宅メーカーとトップを競うほどの結果が業界新聞などで発表されているのです。
営業力が強いのかもしれませんが、単にそれだけではない魅力が同社にあるのではないか。
今回は、一条工務店の「 グラン・スマート(GRAND SMART) 」の紹介を通じて、その魅力を探ってみたいと思います。
同社の最高グレードの「 グランス・マート 」の標準仕様、性能、そして同商品のイメージなどを紹介しますので、是非参考にしてください。
一条工務店の基本コンセプト
一条工務店の代表的なコンセプトには、「 家は、性能 」・「 モデルハウス仕様が、標準仕様 」があります。
有名俳優を使ったイメージ戦略が多い住宅メーカーの中で、非常に具体的でわかりやすいキャッチフレーズだと思います。
住宅性能の具体的なものとしては、耐震性能等級3以上の確保や業界最高レベルの高気密・高断熱性能があります。断熱性能は住宅先進国レベルに匹敵、あるいは上回るほどなのです。
標準仕様でも、一般ユーザーが望む内外装や収納、そして十分な設備機能を装備し、モデルハウスをオプションで着飾ることをしていません。
では、「 グラン・スマート 」を例に、具体的な標準仕様を見てみましょう。
グラン・スマートの標準仕様
前述したように、「 グラン・スマート 」は一条工務店の最高グレードの注文住宅商品で、2022年1月から販売開始されています。
先発商品のグラン・セゾンのデザイン性とアイ・スマートの業界最高レベルの性能を融合させた風格のプレミアム商品としています。
構造・断熱材・窓
一条工務店の構造駆体には、木造枠組壁工法(ツーバイフォー)と木造軸組工法の2種類があり、「 グラン・スマート 」は枠組壁工法になります。
枠組壁工法の一般的な部材寸法が2✕4(38mm✕89mm)に対して、一条工務店では1.5倍サイズの2✕6(38mm✕140mm)としています。
部位 | 標準仕様( 表中の数字単位:mm ) | |
構造 | 基礎 | 鉄筋コンクリート布基礎+防湿土間コンクリート |
上部構造 | 枠組み壁工法( 2 ✕ 6 ) | |
耐久性/耐火性 | 長期優良住宅/省令準耐火 | |
断熱材 | 1階床 | 高性能硬質ウレタンフォーム140厚 |
屋根下(天井) | 高性能硬質ウレタンフォーム235厚 | |
外壁 | 高性能硬質ウレタンフォーム50+140厚( 外内ダブル断熱構法 ) | |
外部建具 | 玄関 | 断熱玄関ドア |
一般窓・勝手口 | 高性能樹脂サッシ(トリプル硝子・アルゴンガス充填・Low-E硝子) | |
キッチン・バスの窓 | ブラインド内蔵高性能樹脂サッシ(高性能Low-E硝子) |
表の構造・断熱などの仕様は、同じ枠組壁工法のアイ・スマート、アイ・キューブに共通で、住宅に必要な基本性能を商品グレードで変えることはしていません。
ここでの一条工務店の特徴としては、2✕6(ツー・バイ・シックス)、外内ダブル断熱、高性能樹脂サッシ、といえるでしょう。
基礎:布基礎(建築基準法を上回るサイズ・鉄筋量)
ベタ基礎ではなく布基礎と聞くと、意外に思うかもしれませんが、住宅地に必要な地耐力(30Kn/㎡以上)があれば、むやみに基礎自重を重くして地盤に負担をかけるよりも合理的なのです。また、コスト的な問題もあります。
それでも、一条工務店の布基礎は、建築基準法で示されているサイズ・鉄筋量を上回る十分な内容となっています。
断熱関係:高性能ウレタンフォーム、トリプルガラス・樹脂サッシ
図に示された断熱仕様で得られる断熱性能は、最も厳しいⅠ地域(北海道夕張等)のZEH基準をクリアするもので、住宅先進国の断熱性能に匹敵あるいは上回るものです。
そして、その仕様・性能が全国一律に適用されているのが同社の特徴といえるでしょう。
開口部(窓関係):樹脂枠+トリプルガラスのサッシ
断熱・省エネが叫ばれている現在でも、アルミと樹脂の複合サッシ枠を標準としているメーカーが多い中で、一条工務店ではより断熱性能の高い樹脂枠サッシを標準としています。
また、室内側の防犯合せガラスの標準採用などにも、同社のこだわりを感じます。さらに、キッチンと浴室の窓以外には、ハニカムシェードが標準で付いており、窓からの熱の侵入や流失を防ぐ徹底ぶりです。
ハニカムシェードが標準( 室内の窓、勝手口 )
なお、キッチンと浴室の窓にはブラインド内蔵型のトリプルカラス樹脂サッシとなります。ここにも断熱への徹底ぶりの姿勢が見えます。
以上のように断熱性能にこだわった一条工務店の窓仕様ですが、ハニカムシェードの評価はユーザーによって大きく異なり、開閉や汚れなどの利用勝手から別途にカーテンを取り付けているユーザーもいます。
内外装・室内収納
一条工務店の外装で知られているのは、石目調のボーダータイルの外壁全面張りですが、「 グラン・スマート 」では上位のハイドロテクトタイルが標準となっています。
部位 |
標準仕様 | |
外装 |
外壁 | ハイドロテクトタイル |
屋根 | 勾配屋根:ガルバリウム鋼板、陸屋根:FRP高耐候トップコート | |
軒裏 | 木目調サイディング | |
内装 | 床 | モクリア(玄関はタイル、洗面・トイレはCFシートも可) |
壁・天井 | オリジナルセレクトクロス | |
収納 |
クローゼット | システムクローゼット( 奥行き:90cm,60cm ) |
シューズボックス | ベビーカー収納タイプも選択可 |
ハイドロテクトタイルには、光と雨で汚れを落とすセルフクリーン機能があり、5色から選ぶことができます。なお、大判のグレイスタイルはオプションとなります。
ハイドロテクトタイル
主力商品のアイ・スマートの標準仕様では、石目調ボーダータイルが一色しかないことから、オプションでハイドロテクトタイルを選ぶユーザーが多いようです。
フローリング:モクリア
標準仕様のモクリアは、合板にシートを貼り付けた複合板ですが、低価格帯のものに比べて彫りが深く、無垢材のような感触と耐久性を両立させています。
システムクローゼット
ハンガーを手前に引き出せるスライドハンガー、上下2段のダブルハンガー、そして小物入れや衣装ケースなど、使いやすさと収納量にこだわった内容です。
シューズボックス
天然御影石カウンターの豪華な仕上がりで、ベビーカーを収納できるタイプもあります。
大きい扉の裏には姿見ができるミラーが付いており、その他の扉には傘や小物を引っ掛けられるマグネット式のアクセサリーを取り付けることができます。
ユーザーが望むメンテナンスのしやすさと耐久性に優れた外壁タイル、収納の充実などは、同社の注文住宅に共通で、「 モデル仕様が標準仕様 」を具体化したものです。
そして、「 グラン・スマート 」は、仕上材をより上位の品質にしたものと言えるでしょう。
水回り設備
一条工務店の水回り設備には、グレイス、スマート、ラシックの3種類あります。もちろん、「 グラン・スマート 」では最高グレードのグレイスが標準になります。
部位 | 標準仕様 | |
水回設備 | システムキッチン | ダイニング側収納棚付きタイプ、カップボード |
グラリオカウンタートップ、フルスライド式収納 | ||
グリル付きIHクッキングヒーター、引き出し式シャワー水栓、食器洗い乾燥機 | ||
洗面台 | 彫りの深い木目調仕上げ(カラーバリエーション:5種類) | |
ハンドシャワー、大容量のドレッサー収納 | ||
システムバス | 1.6Mの浴槽サイズ(ホワイト・ブラック) | |
カラーバリエーション:4種類 | ||
グラリオカウンター、マグネット式アクセサリー | ||
換気・空調 | 24時間換気システム | セントラル熱交換型換気システム( ロスガード90 ウルケア ) |
全館床暖房システム | 電気ヒートポンプ式全館床暖房システム(エアコン付属) |
一条工務店の標準仕様には、同社のオリジナル商品やシステムが多くなっています。ただ、トイレにはこだわりがないようで、最高グレードの「 グラン・スマート 」でも、ごく一般的な暖房温水洗浄機付きの便座+タンク式の便器が標準となっています。
グレイスキッチン
一条工務店:グレイスキッチン(ダーク)
グレイスキッチンに採用されているグラリオカウンターとは、天然石を有機ガラスと雲母で忠実に再現したもので、傷に強く高級感に溢れたカウンタートップです。
システムキッチン本体は、写真の様にダイニング側がカップボード風になっているタイプです。ですから、ダイニングテーブルをくっつけて利用することができず、ダイニング側に十分な広さが必要になりますね。
グレイスキッチンは、彫りの深い木目調仕上げの重厚感と格式を感じさせるシステムキッチンで、家具のようなイメージもあります。
一条工務店:スマートキッチン(プレミアムホワイト)
一方で、高級家具なような雰囲気には、圧迫感がある、あるいは先のダイニングテーブルをくっつけて使えないなどの評価もあります。
そのため、グレードダウンしてバリエーションタイプの多いスマートシリーズを選ぶユーザーも多くいるようです。
バスルーム
一条工務店:バスユニット(アーバン)
浴槽は、身体を伸ばせるゆとりの1.6Mサイズで、ピュアホワイトとピュアブラックの2種類が用意されています。なお、カラーコディネートは4種類となっています。
一条工務店のユニットバスで特徴的なのは、ミラー・タオル掛・シャワーフックなどは着脱式のマグネットタイプで、身長や使い勝手に合わせて変更することができます。カウンターはグラリオで、最高グレードにふさわしいものです。
洗面化粧台
汚れにくく掃除のし易いフラット洗面台で、壁付きのシャワー水栓も使いやすそうです。
ドレッサー収納は、一条工務店の特徴である大収納量のもので、プッシュ開閉扉、耐震ロック機能、フルスライド式キャビネットなど、安全と使いやすさに配慮されています。
24時間換気システム:ロスガード90+ウルケア
一条工務店:ロスガード90
ロスガード90は、熱交換型の24時間換気システムで、室内の暖まった、あるいは冷やした空気を給排気する際に、最大90%の熱交換するもので、省エネ性能に優れています。
給気の際に、花粉・カビ・黄砂・PM2.5などの有害物質を最小限にするフィルター付きで、きれいな空気にこだわっています。
一条工務店:ロスガード90 ウルケア
そして、「 グランスマート 」では、乾燥し過ぎを防ぐ湿度調整機能を加えたロスガード90 ウルケアが標準仕様となっています。
全館床暖房
一条工務店といえば全館床暖房、というほど知られています。図のように、玄関や浴室まで100%暖房するシステムです。
全館床暖房ではヒートショックがないと共に、部屋ごとの温度差がないことから、部屋に閉じこもることなく、活動的に家を広く利用することができる良さがあります。
グラン・スマートのオプション
一条工務店の最高グレードの商品ですから、すべて揃っていると思われがちですが、そうではありません。意外なものがオプションになっています。
全館さらポカ空調
さらポカ空調は、全館床暖房に湿度調整機能を付け加えたもので、夏はサラサラ、冬はぽかぽかの一年中快適な温湿度環境となります。
「 グランスマート 」では、ロスガード90 ウルケアで湿度調整機能が標準で加わっていますから、これは必要ないですね。
太陽光発電パネル(屋根一体型)+蓄電池システム
一条工務店の戸建て住宅の太陽光発電搭載率は90%を超えており、業界でもトップクラスです。
その一条工務店で太陽光発電がオプションなのは意外な気がします。それでも搭載率が90%を超えているのは、自社製品で安く提供できるメリットを生かしたものでしょう。
網戸
網戸がオプションと聞くと驚くユーザーが多いと思います。あるユーザーは、担当営業マンから、24時間換気システムと全館床暖房では、窓を開ける必要はありません、と言われたそうです。
しかし、年中締め切った家で過ごすのは辛いですよね。過ごしやすい季節には窓を開けて自然を感じたいものです。
ですから、網戸オプションは必須でしょう。全窓に網戸を加えると、10〜15万円ほどです。
上記以外にもありますが、「 グラン・スマート 」でオプションの検討が必要なのは、太陽光発電と網戸くらいではないでしょうか。
グラン・スマートの内外イメージ事例
一条工務店の外観イメージには、ボックス形状と片流れ屋根がありますが、「 グラン・スマート 」ではどうでしょうか。また、内部イメージはどうか。確認してみましょう。
外観イメージ
「 グラン・スマート 」では総二階とせず、凹凸と奥行きのあるデザインが基本で、最高グレード商品らしい邸宅感があります。
グラン・スマート:住宅公園松本モデルハウス
写真では、大きいバルコニーと大判のグレイスタイルで意匠化されていますが、全体的にはおとなしいデザインです。モデルハウスですが、飾りすぎないこれくらいが一般的な住宅地には向いていると思います。
グラン・スマート:札幌森林公園駅前MH
この「 グラン・スマート 」は、造形的なインパクトがあり、正面のブラウンとブラックのカラーコーディネートに高級感があります。
間口の広さもありますが、平屋の広がりを感じさせ、「 グラン・スマート 」の平屋として参考になるデザインです。
内装イメージ
グランスマートの内装イメージ(カラーコンセプト)には、下記の4タイプが用意されています。基本となるカラーは、フロア、システムキッチン・洗面化粧台とほぼ同じ色合いです。
コンセプトスタイル:一条工務店プレス発表資料より抜粋
カラーバリエーション
下の画像は、MELLOEBROWNカラーのリビングで、床・ドア・階段のMELLOW(優しい)ブラウンにグレードの高さを感じます。落ち着く色合いですね。
グラン・スマート:HPより転載
グラン・スマート:HPより転載
和室に採用されているJAPN NATURALで、モノトーンの色合いに明るいベージュの格子建具よく合っています。また、繊細で上質なイメージですね。
以上、グランスマートの外観イメージと内装イメージを見てみると、内装イメージは最高グレードにふさわしい上質な仕上がりになっています。
一方、外観については邸宅らしい仕上げですが、片流れ屋根が特徴的でユーザーによっては好き嫌いが分かれるのではないでしょうか。
グランスマートの相場価格と価値
一条工務店の最高グレードの「 グラン・スマート 」ですが、気になるのは価格ですよね。
同商品の本体価格相場は70〜90万円/坪で、冒頭の超大手住宅メーカーの100万円/坪を超える価格に比べるとリーズナブルです。
住宅性能や装備品などの仕様内容は、価格以上のものですが、総合的な判断から「 グラン・スマート 」を選ぶか、となると考えてしまいます。
同社には、ベストセラー商品のアイ・スマート( 本体価格:70万円前後/坪 )があり、同じ住宅基本性能なら、同商品をベースに必要なオプション(主に内外装)を選ぶ方がよいのではないか、と思います。
まとめ
本記事では、一条工務店の魅力を同社の「 グラン・スマート 」を通じて探ってきました。
一条工務店の注文住宅では、そのグレードによらず住宅に必要な基本性能を共通の最高レベルで提供しているのが魅力で、非常にコスパの高い住宅を提供しています。
その同社の最高グレードの「グラン・スマート」は、奥行きのある立体感でプレミアムな風格をデザインし、業界最高レベルの住宅性能をも兼ね備えた注文住宅です。
一方、同じ住宅性能なら、下位グレードのアイ・スマートをベースとして、ハイドロテクトタイルや内装などを個別にオプション選択する方が、よりリーズナブルでライフスタイルに合ったマイホームとすることができる、と言う考え方もあります。
邸宅感のある「 グランスマート 」とするか、よりリーズナブルなアイスマーをベースとするか、本記事を参考にしていただければ幸いです。
住宅は一生に一度の高価な買い物です。数千万円単位になるため、できれば値段を安くしたいものです。
実は値段の高い注文住宅ですが、建売よりも安く家を建てられる方法があるってご存知ですか?
建売でもいいですが、せっかくであれば自由に仕様や間取りを選べる注文住宅がいいですよね。
ただ、注文住宅は失敗してしまう方がほとんどです。夢のマイホームで後悔したくないですよね。
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