現在の平均的な2階建て新築住宅では、各階のトイレ、つまり2箇所設置が普通になってきました。住生活の向上や上下階移動の不便さを考えれば、当然の流れだと思います。
では、平屋で2箇所のトイレは必要でしょうか?
一条工務店の標準的な2階建てでは、2箇所までが標準仕様に含まれ、平屋では1箇所までとなっています。
限られた予算や延床面積、そして生活スタイルなどによって、考え方は異なるとは思いますが、今回は平屋の2箇所トイレについて考えてみたいと思います。
なお、本記事は、二世帯住宅や親子二世代同居住宅のトイレではなく、標準的な子育て世代の住宅を対象にして述べます。是非、参考にしてください。
トイレの役割・目的を見直してみる
掲載元:TOTO
トイレに求められるのは、まずは清潔と衛生です。当然ですよね。しかし、現在ではそれだけではなく、快適性やオリジナリティーなども求められています。
つまり、トイレはオーナーの生活スタイル、言い換えれば住宅に込められた想いが現れる場所でもあるのです。
そこで、平屋に2箇所のトイレが必要か否かを考える前に、衛生面以外のトイレの役割や目的を見直してみましょう。
来客者を意識した見せるトイレ
掲載元:DIYREPI
親しくしている友人・知人でも来客者としての一定の緊張感があり、一人になれるトイレはホッとする場所です。
そして、先にトイレはオーナーの生活スタイルや住宅に込められた想いが現れる場所と述べたように、トイレの内装やインテリアなどにオーナーの生活スタイルや個性を感じるのです。
見栄を張ったり、かっこよく見せようとする必要はありませんが、気持ちよく利用できて好感をもってもらえれば、それもオーナーのおもてなしになるのではないでしょうか。
利用のしやすさ、視線、音、動線に配慮
たとえ、家族でも視線や音で利用しにくいトイレでは、ストレスがたまります。来客者なら、なおさら抵抗を感じるでしょう。
住んでみて、初めて気づくのでは後悔するばかりです。トイレへの出入りが、ダイニング・リビング、あるいは玄関からダイレクトに見えるレイアウトは注意ですね。
朝の活動開始時の動線に配慮したトイレ
2箇所トイレを設置する目的の一番に、家族の同時使用に対応する、というのがあります。
朝の活動開始時などには、トイレの取り合いになることもあるでしょう。家族が多い場合は、特にありそうですね。
その場合、各個室からトイレまでの動線が、キッチン・ダイニングなどの家事動線とできるだけ重ならないようにしてください。
朝の忙しい時などの交差動線は、住居内事故が起こりやすくなります。今回のテーマではありませんが、洗面所への動線も同じことが言えます。
それらの全てを解決するのは難しいと思いますが、通路幅の拡幅や回遊動線などである程度は解消することができます。
計画中の間取り図上で、移動シミュレーションしてみると、問題点などが見えてきますから、チェックしてみてくださいね。
高齢化に対応できる配置とスペース
掲載元:TOTO
上下階移動のない平屋には、オーナーの高齢化にも大掛かりなリフォームなしに対応できる良さがあります。
ですから、できれば新築時に高齢者対応のトイレの配置(動線)や広さにも配慮しておく方がいいでしょう。
二世帯住宅や二世帯同居住宅でない限り、将来的には子供部屋が空き部屋になり、高齢者の主寝室とすることもできます。
ですから、トイレの位置は高齢者の主寝室と合わせて、総合的に検討しておくことを勧めます。
平屋のトイレ位置と動線の実例
では、いよいよ平屋の2箇所トイレのプランを検証してみましょう。合わせて、1箇所トイレのプランも紹介しますので、比較チェックしてみてください。
なお、図上で青線は主寝室からの利用動線、水色は家族のLDKからの利用動線、そして赤色は来客者の利用動線を示しています。
事例−A:2箇所トイレ/28.5坪(3LDK+FCL+書斎)
元データ:株式会社ノーブルホーム/施工事例
延床面積28.5坪ですから、各室は十分な広さとは言えませんが、コンパクトに上手にまとめられたプランだと思います。
動線も短く回遊動線とする必要がありません。主寝室からのトイレは玄関にありますが、たくみに飾り棚の壁を利用して見えなくしています。また、来客者も気兼ねなく利用できる動線になっています。
設計段階で、2箇所トイレの役割を明確に区別している間取りで、トイレだけでなく各室への出入りに引き戸を採用しているところも、将来を見越したプランだと思います。
事例−B:2箇所トイレ/3LDK
元データ:L.T.homes/施工事例
このプランでも、2箇所トイレの使い分けを明確にしています。特に、玄関側のトイレには洗面コーナーが隣接しており、来客者も利用しやすいだろうと思います。
さらに、将来的にトイレと洗面コーナーを1室とすれば、高齢者対応のトイレとすることもできる汎用性があります。
浴室側のトイレは、洗面脱衣室内にオープンな形で配置されているのが特徴で、これなら車椅子にも対応できますね。
事例−C:2箇所トイレ/3LDK+WIC+書斎
元データ:一条工務店/施工事例
一条工務店の実施例です。詳細図面で見にくいかもしれませんが、ここでもトイレの明確な使い分けの意図を感じます。
このプランでは、キッチン側トイレの出入り口が洗面所内にあり、合わせて化粧室的なスペースになっています。
見られたくない脱衣洗濯室と分離された位置にありますから、来客者にも利用してもらえますね。
事例−D:1箇所トイレ/3LDK+WIC
元データ:一条工務店:施工事例
一条工務店の平屋ではトイレ1箇所が標準ですが、上のプランはその一例です。
このプランでは、LDK・脱衣洗濯・洗面・トイレへは回遊動線となっていますが、来客者のトイレ動線は見られたくない場所を回避しています。
トイレと洗面スペースが一体化されており、脱衣洗濯室とは分離されていますから、オシャレな化粧室とすることもできますね。
掲載元:prohpme
一条工務店のプランでは、図のような洗面室と脱衣室を分離したレイアウトが多く、見せる・見せないを明確に意図しているように思います。
朝の混雑は避けられませんが、1箇所トイレでも家族・来客者共に快適に利用できるトイレの一例です。
トイレを1箇所ふやせばいくら増える?
さて、トイレが2箇所あれば便利なのは分かりますが、一体いくら増えるのでしょうか?
グレードにもよりますが、便器本体(暖房温水洗浄便座付き)で15万円前後、設置と給排水管工事、そして電気工事などを含んで、ざっくりとは20万円前後でしょうか。
ただし、これは延床面積を変えない場合で、トイレを増やすことで床面積も増えるのであれば、通路等を含めて1坪ほどが増え、本体坪単価相当の費用が別途必要になります。
ですから、増える床面積費用を含めた合計としては、70〜100万円ほどになるでしょう。
この費用が、ユーザーのライフスタイルに対する満足感やコストパフォーマンに見合うかどうかが判断基準になります。
ただし、この場合のコストパフォーマンスは、数十年単位で考えるべきですから、決して悪いコスパにはならないはずです。
トイレに関する豆知識
ここまで、平屋のトイレの箇所数、位置、動線などについて述べましたが、その他の豆知識も紹介しておきましょう。トイレを計画する上での参考にしてください。
<換気設備が充実している現在は、換気窓は必須ではない>
かつては、戸建て住宅のトイレは外壁に面して配置し、小窓をつけるのが常識的に行われていました。ですが、現在では換気システムが標準化され、換気窓が必要なくなり、間取りの自由度が上がっています。
<暖房温水洗浄便座一体型トイレの選択に注意>
一体型トイレは、オシャレでスマートですが、便座部分が故障しても修理や取替えができない場合があります。
修理部品は製品廃盤後も数年は供給されますが、その後は修理することができず、本体ごと交換するしかありません。一体型のメリット・デメリットを知った上で選ぶようにしましょう。
<トイレットペーパーと掃除具類の収納スペース>
清潔でスマートな現在のトイレですが、トイレットペーパーや掃除用具の収納スペースはどうでしょうか。
まとめ買いが多いトイレットペーパーや見られたくない掃除用具などは、トイレ内の専用スペースに納める方がスマートで便利です。
<手洗い付きタンクと手洗い無しタンク>
タンクレスでは手洗いコーナーを別途トイレ内にもうけますが、タンク式では手洗い付きを選ぶか無しにするかの選択があります。
手洗い付きを選んだ場合、タンクまわりが水しぶきで濡れることがあり、カビやシミなどの汚れに繋がりやすくなります。ですから、汚れを拭き取りやすい壁紙にしましょう。
掲載元:TOTO
<タンク式トイレとタンクレス式トイレ>
タンク式トイレは、タンク内に溜めた水を一気に流して洗浄するタイプで、タンクレス式は水道の水圧で洗浄するタイプです。
タンク式は連続した洗浄はできませんが、タンクレス式では水を溜める必要がないため、連続した洗浄が可能です。
掲載元:TOTO
なお、タンクレスの場合は一定以上の水圧が必要で、一般的な住宅地の水道管の水圧では2階以上には設置できない場合があります。
また、水道管に直結のため、電気制御のバルブが必要となり、停電時には使用できないデメリットがあります。メリットとデメリットは常に裏表なのです。
ただし、一条工務店の戸建て住宅では、太陽光発電・蓄電システムの搭載率が90%を超えていますので、同社の住宅では、あまり考えなくてもいいかもしれませんね。
なお、電気を使わないフラッシュバルブ式のものもありますが、主に給水管径が大きいパブリックの建物などに使用されています。
まとめ
今回は、平屋に2箇所のトイレが必要か否か、をテーマに述べてきました。そして、本記事なりの結論としては、今後の主流は2箇所トイレになるだろうと考えています。
理由は、同時使用の解決と来客者にも使いやすいアメニティー空間とするための使い分けで、住生活が向上していくの中では求められる要素だと思います。
ただし、同時使用の不便さは避けられませんが、大きさや配置、そして動線の工夫で1箇所でも利用しやすい快適なトイレとすることは可能です。
一条工務店の平屋では、1箇所トイレが標準ですが、推奨モデルや実施例ではトイレと洗面を一体化させ、化粧室的なアメニティー空間としているケースがほとんどです。そこに、機能一辺倒だけではない、快適さをも考慮した同社の考え方を感じます。
いずれにしても、子育て世代から高齢者世代まで、平屋の実質的なライフスタイル寿命は2階建てよりも長く、おろそかにしがちなトイレの役割が、意外なほど大きいことに気づくはずです。
平屋の間取り計画の中で、本記事が参考になればと願っています。
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