マイホーム計画で住宅メーカーを選ぶ時、最初はイメージから始めても、候補を絞っていく中では、価格や仕様などの比較へと具体的な検討になっていくものです。
その具体的な検討の一つに、各住宅メーカーのメリット・デメリットがあります。
一般的に、メリットがあればデメリットもあるもので、すべてがメリットだけ、と言うのはまずありませんね。
また、メリット・デメリットのプラス・マイナス結果だけが住宅メーカーを選ぶ基準ではありませんし、ユーザーのこだわりや住宅メーカーのイメージも重要なポイントでしょう。
ですが、メーカー選びに迷っている時、あるいは契約前でも、ゼロに戻って冷静にメリット・デメリットを検討してみることも必要ではないでしょうか。
そこで本記事では、年間販売戸数でトップクラスの一条工務店を取り上げ、同社住宅のメリット・デメリットを検証していきます。是非、参考にしてください。
一条工務店の独自技術のメリット・デメリット
冒頭で述べたように、メリットがあればデメリットもあり、多くは表裏一体のものです。
また、何にメリットやデメリットを感じるのか、あるいはそれを感じる程度も人それぞれですが、ここでは一般的な評価で検証することとします。
耐震性能等級3以上の社内ルール
住宅メーカーの中には、” プランによっては最高等級3とできない場合があります ” と但し書きをつけているのを多くみかけます。
ですが、一条工務店では、耐震等級3以上を社内ルールで必須としています。
出典:ALSOK
品確法の耐震等級は、上図のように建築基準法レベルを等級1、1.25倍を等級2、1.5倍を最高等級3としています。
しかし、一条工務店の社内ルールでは、建築基準法で定められている耐力壁の強さ(量)の最低でも2.0倍としており、より大きな安全と安心感が得られるのは大きなメリットになるでしょう。
建築基準法レベルの耐震等級1は、阪神・淡路大震災相当の地震でも倒壊しない強さとされています。
一方、耐震等級3以上の安全・安心を確保するために、同社では吹抜けの大きさやスキップフロアができないなどのプラン制限があります。
ユーザーによっては、” 自由設計なのにプラン制限? 何故? ” とデメリットに感じるかもしれませんね。
詳細な構造計算や補強で、大きな吹抜けやスキップフロアを実現させることは可能ですが、コストの大幅アップは避けられません。つまり、コストの問題ですね。
一条工務店の耐震性能等級3以上の結論としては、一定のプラン制限というデメリットよりも、より安全・安心のメリットを優先するべきだと思います。
業界トップクラスの断熱性能( ZEH仕様 )
出典:一条工務店
一条工務店の断熱性能の高さは有名で、同社の外内ダブル断熱構法のUA値0.25W/㎡・kは、最も条件の厳しい北海道夕張市等(1地域 )のZEH基準(0.4W/㎡・k)をクリアするものです。(グランスマート、アイスマート)
驚くのは、この1地域のZEH基準をクリアする外内ダブル断熱構法が、全地域に標準仕様として適用されていることです。
最高スペックの断熱性能による省エネと冷暖房費の削減は大きなメリットですが、温暖な地域では過剰スペックではないか、と言う評価もあります。
UA値(外皮平均熱貫流率)は、外皮(屋根・外壁・窓・床)を介して住宅全体の熱がどれくらい逃げるかを示す数値です。UA値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能の高い住宅となります。
これをデメリットとみるかどうかは難しいところですが、断熱グレードを3段階(3地域)ぐらいに分けて、” その分の価格を下げて欲しい ” という見方もできるでしょう。
参考に積水ハウスの断熱グレードを紹介すると、標準、ハイグレード、プレミアムの3種類に分け、地域に応じた仕様としています。
断熱性能の基準は、数年ごとにレベルアップしており、今後もレベルアップが予測されます。すでに、現行のZEH基準(断熱性能等級5)よりも上位の等級が国交省より提示されています。
これを考慮すると、現状では過剰スペックとなる断熱性能も、将来的には標準的な性能となるかもしれません。ですから、後述する長期優良住宅の長寿命を考えればメリットとみるべきでしょう。
長期優良住宅:三世代が引き継いで住み続けられる住宅
近年の新築住宅では、長期優良住宅が標準仕様になりつつあり、当然ながら一条工務店も標準仕様としています。
長期優良住宅には、耐久性やメンテナンス性などが向上するメリットもありますが、住宅の資産価値が上がるメリットもあります。
つまり、経年による住宅価値の低下が、他の住宅に比べて小さいメリットもあるのです。
さらに、住宅ローン減税や不動産取得税なども、他の一般的な住宅に比べてより多くの減税を受けることができます。
デメリットは、長期優良住宅とするための建設コスト、そして申請や認定などの手続き費用が必要になることなどです。
さらに、維持保全計画書に基づく点検・修繕、そしてそれらの記録が必要になるのです。
長期優良住宅の申請や認定の手続き、そして点検・修繕は主に住宅メーカーが行ってくれますが、ユーザーもそれらのメンテナンスに注意を払っておく必要があります。
つまり、ユーザーも建てっぱなしや住みっぱなし、というわけにはいかないのでです。
維持保全の実施記録は、行政庁への提出義務はありませんが、求められれば報告する必要があり、適切に実施していないと認定が取り消される場合があります。
以上をふまえて、長期優良住宅のメリット・デメリットのどちらを重視するべきか。
3世代が住み続けられる耐久性やメンテナンス性、そして将来的に売却する可能性もあることを考えると、やはり長期優良住宅が正解だと思います。
将来の人口減と住宅ストック(中古住宅)が増えていく中では、有利に売却できる長期優良住宅は大きなメリットです。
一条工務店の独自商品のメリット・デメリット
一条工務店の特徴としては、同社の自社生産品を含めて独自の商品を標準仕様としていることがあります。
同社は、断熱材、サッシ、床暖房、太陽光発電パネル、システムキッチン、ユニットバスなど、多くの製品を自社のグループ工場で製作しており、その規模はギネスに登録されているほどです。
それらの独自商品を標準仕様とするメリット・デメリットを考えてみましょう。
全面タイル外壁:耐久性が高くメンテナンスが楽
一条工務店では、耐久性とメンテナンス性に優れたタイルを標準仕様としています。
紫外線や酸性雨などによる劣化がほとんどない、そして塗り直しリフォームの必要がないタイルは、一般的な窯業系サイディングよりも初期コストは高くはなりますが、長期スパンで考えた場合のコスパは非常に高いものです。
同社の標準仕様の外壁タイルのデメリットとしては、ホワイトの1色しかないことです。
ですから、多くのユーザーは5色から選べるオプションのハイドロテクトタイルを選んでいるようです。
ハイドロテクトタイルは、TOTOのハイドロテクト技術を採用しており、太陽と雨の力で汚れを落とすセルフクリーニング機能があります。
出典:一条工務店
一条工務店の試算によると、一般的な窯業系サイディングと比べた場合、60年間のメンテナンス費用が740万円も削減できるとあります。
出典:一条工務店
ただし、窯業系サイディングと標準タイル、あるいはハイドロテクトタイルとの差額は、150〜250万円ほどありますから、実際には490〜590万円ほどの削減になります。それでも大きな金額ですね。
いずれにしても、一条工務店が外壁にタイルを標準としていることのメリット・デメリットは、短期的にはマイナス、長期的にはプラスとなり、多くのユーザーは長期的なプラスを選択するだろうと思います。
水回り設備:オリジナル商品が多用されている
一条工務店では水回り設備にもオリジナル商品が多く採用されています。その中でも、キッチン設備が代表格で、グレード順にグレイスキッチン>スマートキッチン>i-スタンダードキッチンとなっています。
特に人気なのがスマートキッチンで、品質・機能、そしてバリエーションともに、キッチン専業メーカーに劣らないものです。
出典:一条工務店
また、同社オリジナルの洗面台は収納スペースがたっぷりで、ユニットバスは1.25坪タイプというメリットがあります。
一方で、どうしても採用したいこだわりの設備が他社製品の場合、予想外の高額オプションとなる場合があります。
日常的に使うことの多い水回り設備は、ユーザーのこだわりが現れるところですが、専業メーカーに負けない一条工務店のオリジナル商品は満足のいくものだと思います。
全館床暖房の必要性とメリット・デメリット
一条工務店では、全館床暖房も有名ですが、そのメリット・デメリットを考える前に、まずは本当に床暖房が必要な地域かどうかを考えてみてください。
寒冷地域での全館床暖房は、たしかに快適な冬を過ごせますが、温暖な地域では同社のZEH基準の断熱性能と一般的なエアコンで十分に快適な環境となります。
出典:一条工務店
全館床暖房のヒートショックがない、足元から温まる、などは一般的なメリットですが、一条工務店の場合は、延床面積に応じたエアコン(室内機)がセットと言うメリットもあります。
当然、価格には含まれているでしょうが、個別に設置するよりは安くなるのは間違いありません。
床暖房のデメリットとしては、温まるのに時間がかかる、あるいは初期費用やメンテナンス費用が高いなどがあります。
冬季の利用開始時の不凍液の補充、そして10年ごとの入れ替えメンテナンス費用(5〜10万円)、さらに室外機の故障時の費用も計画に入れておかなければなりません。
なお、床下の配管には継ぎ目がなく耐久性も非常に高いものとしており、同社の説明ではほぼメンテナンスフリーとのことです。
全館床暖房を導入したが、利用期間が短い、あるいは全館床暖房するほどではなかったなどの声もあり、住む地域によってメリット・デメリットは大きく異なります。
本当に全館床暖房のメリットを活かせるかどうかを判断基準にしてください。
熱交換型24時間換気システム(ロスガード90)
換気システムは、建築基準法で必須条件となっており、下図のような3種類があります。
一条工務店のロスガード90は、給排気ともに機械で行う第1種換気システムを採用しており、給排気の際に熱交換と湿度交換する機能を付け加えています。
さらに、ロスガード90には、花粉・カビ・黄砂・PM2.5の侵入を大幅に防ぐ機能も備わっており、換気システムとしてはフルスペックの機能と言えるでしょう。
出典:一条工務店
以上はメリットになりますが、デメリットとしては、半年〜1年で給気フィルターと防虫袋の交換が必要になること、月一度の排気フィルター掃除があります。
フィルター関係の交換費用は、年に5,000円ほどですが、いくつもある各フィルター掃除は少し面倒ですね。
余談ですが、一条工務店では24時間換気システムで窓を開放しないことを前提としているのか、網戸がオプションになっています。
でも、気候のいい春や秋に限らず、夏・冬でも時には窓を開けて自然を味わいたいものですよね。ですから、網戸オプションは必須です。
一条工務店の太陽光発電システム搭載率90%以上
一条工務店では、屋根一体型の太陽光発電パネルを自社のグループ工場で生産しています。
省エネ、光熱費の削減、そして停電時の給電などのメリットは良く知られていますが、デメリットとしての初期費用やメンテナンス費用が気になりますね。
一条工務店の太陽光発電と蓄電池のシステム費用は、発電容量にもよりますが、180〜250万円ほどで、他社の屋根一体型パネルに比べると格安の設定となっています。
これは、自社生産によるメリットで、高額な初期費用のデメリットを大きく削減しています。
また、屋根一体型の太陽光パネルは、屋根瓦の上に載せるタイプに比べて、美観や重量の点でも有利です。
太陽光発電による省エネは時代の流れで、少なくとも戸建て住宅においては、今後も普及していくでしょう。 特別な事情がない限り、選ばない選択肢はないように思います。
メリット・デメリットは長期スパンで考える
当初はメリットあるいはデメリットと考えていたことも、ライフスタイルの変化や価値観の変化などで変わってくることがあります。
初期費用としては高いと感じるものも、数十年スパンでは安く感じることがあるのです。
住宅の基本性能:変わらない価値感
住宅に最低限必要な基本性能は、耐震性能と断熱性能で、この2つの価値感は今後も変わることはありません。つまり、安全・安心と省エネです。
住宅に求められる基本性能は、社会背景などから今後もますます向上していくでしょう。ですから、耐震性能と断熱性能は、できる限り最高のスペックで計画するようにしてください。
一条工務店の耐震性能と断熱性能は、いずれも業界の最高水準を標準としていますから、数十年先でも十分に市場価値のあるものです。
経年劣化しやすい設備のコスパを考える
先に紹介した耐震性能や断熱性能を含めた長期優良住宅仕様のコストは、3世代が住み続ける長期スパン(60〜90年)で考え、メリットを優先するべきと述べました。
しかし、水回り設備などは経年劣化などで、やがては入れ替えリフォームの必要が出てきます。長くて、20年前後でしょう。
場合によっては、より機能や性能の高い商品が普及してきて、既存設備の陳腐化が目立ち、もっと早い時期に入れ替えることもあるでしょう。
こだわり商品による満足感を否定するわけではありませんが、せっかくこだわったオプション設備の対費用効果(コスパ)も合わせて考えておくべきです。
新築に際しては、費用をかける優先順位を決めておくことが大事ですね。
時代・社会背景を見越した初期費用
太陽光発電システムが普及しはじめて約30年ほどになりますが、価格・性能ともに十分に納得のいくものになってきました。
全国の新築戸建て住宅の太陽光発電システム搭載率は、12.3%(2020年環境省調査)で、国が政策に挙げている2030年までに60%は程遠い数字です。
参考に、一条工務店の2022年の太陽光発電システムの搭載率は94%を超えています。
一条工務店でも、太陽光発電システムはオプションとなりますが、自社工場生産でコストを抑え、普及しやすくしたスタンスは時代を見越した対応と言えるでしょう。
まとめ
一条工務店のメリット・デメリットをプラス・マイナスした本記事なりの結論としては、メリットの方が圧倒的に多いという評価です。
業界トップレベルの耐震性能や断熱性能、そして自社のグループ工場による多種にわたる独自製品でコストを抑え、デメリットを最小化させた結果です。
例えば、同社の主力商品アイスマートの本体坪単価は70万円前後で、本記事で紹介した性能と設備(太陽光発電システムを除く)を備えているのですから、非常にコスパが高いと言えるでしょう。
冒頭で述べたユーザーのこだわりやイメージも住宅メーカー選びでは重要ですが、客観的に判断した場合、同社の仕様や性能は年間販売戸数トップを誇るにふさわしい内容とコスパだと思います。
住宅は一生に一度の高価な買い物です。数千万円単位になるため、できれば値段を安くしたいものです。
実は値段の高い注文住宅ですが、建売よりも安く家を建てられる方法があるってご存知ですか?
建売でもいいですが、せっかくであれば自由に仕様や間取りを選べる注文住宅がいいですよね。
ただ、注文住宅は失敗してしまう方がほとんどです。夢のマイホームで後悔したくないですよね。
※お断り自由・完全無料