静岡県は、北に富士山、西に浜名湖、東に伊豆半島、そして南には駿河湾をもつ国内有数の観光地です。交通面では、東名・新東名の高速道路と東海道新幹線が走り、東京と関西をつなぐ重要な位置にあります。テレワークが進んでいる現在では、住みやすい条件にあると言えるでしょう。
静岡県では東海地震に対応するため、他県よりも厳しい建築基準が条例で義務付けされています。
具体的には、他県の地震地域係数が1.0に対して静岡県では1.2となっており、木造の建物を壁量計算（簡易計算）で検討する時にはバラツキを考慮して、さらに1.1の係数を掛け、1.32にすることと定められています。
これは建築基準法の1.32倍の強さを求められていることになり、住宅品質確保促進法（品確法）の耐震等級2（1.25倍）と耐震等級3（1.5倍）の中間になります。また、長期優良住宅の耐震基準（等級2以上）をクリアするもので、地震に対する意識が他県よりも高いといえるでしょう。
そんな地震に対する意識が高い静岡県で、実績のあるローコスト住宅メーカーと工務店を紹介します。
住宅メーカーと工務店の定義
住宅会社には、自社で全国展開している大手住宅メーカー、広域で展開しているフランチャイズメーカー、そして限られたエリアで展開している地域業者まで様々です。
本記事では、自社で全国展開している会社と広域展開しているフランチャイズメーカーを住宅メーカーとし、事業規模や組織の大きさに関わらず、比較的狭いエリアで展開している業者を工務店と呼ぶことにします。
したがって、地域密着型の工務店でも、フランチャイズに加盟している場合は、メーカーの基本仕様や規格を元にしていることから、ここでは住宅メーカー扱いとします。
個性豊かな工務店
地域密着型の工務店の良さには、住宅メーカーでは対応しきれない地域文化による住宅事情に精通していること、そしてきめ細かいアフターサービスがあります。
このような工務店の利点を生かしてユーザーのライフスタイルに合った工務店を選べば、住宅メーカーに負けない満足度の高いマイホームを建てることができます。
以下から静岡県下で10年以上の事業継続年数があり、ローコスト住宅を建てている工務店を紹介しましょう。参考になれば幸いです。
田畑工事株式会社
施工事例（掲載元：SUUMO）／延床面積：132.42㎡（40坪）、坪単価：50〜62.4万円
創業1966年の地域密着型の工務店です。流行に流されず、素材や造りに妥協しないことを創業以来の変わらぬ想いとしています。また、親から子へと受け継がれる家を目指し、建て替える気にさせない家造りにもこだわっています。
専業の営業マンをおかないなどでローコストを実現しており、施工エリアは浜松を中心に、磐田、袋井、湖西となっています。
写真の建物は長期優良住宅仕様で、屋根はガルバリウム鋼板、外壁はガルバリウムと窯業系サイディングとの組合せ、サッシは樹脂サッシとなっています。内装は、無垢の床材と天然紙と漆喰壁となっており、自然素材も同工務店のこだわりです。
亥太郎建設
施工事例／延床面積：92.73㎡（28坪）、坪単価：55万円（税抜）〜
静岡県の御殿場、裾野、小山、沼津など、主に東部を施工エリアとしている2003年設立の工務店です。
2022年には御殿場、裾野、小山エリアで、知人に紹介したい住宅会社、安心のアフターサービス、満足度の高いリフォームでそれぞれNo.1となっています。地域に信頼されている証でしょう。
写真の建物は長期優良住宅仕様で、耐震等級3、省エネルギー性能等級4相当となっており、同工務店の標準仕様となっています。
納得住宅工房
施工事例（掲載元：SUUMO）／延床面積：140.77㎡（42.5坪）、坪単価：47.0〜58.7万円
1999年の創業で、富士市に本社を置き、西の浜松から東の三島までに6拠点を構えている中堅の住宅会社です。ですが、主に静岡県下を施工エリアとしていることから、本記事では工務店のカテゴリーとしておきます。
写真の内装には、無垢材と漆喰が使われており、オーナーが同工務店の「身体に優しい自然素材の家」に惹かれて決めたとのことです。完成した家はハウスダクトを発生させるカビの原因になる結露のない家が実現して納得されているとのこと。
しんせつハウス株式会社
OPEN HOUSE
施工事例（掲載元：LIFULL HOUSE’S）／延床面積：132㎡（40坪）、坪単価：38.5〜49.9万円
2012年に設立された工務店で、磐田市を中心に事業展開しています。同工務店には、2LDKのYOHACO HIRAYA（税込1,538万円〜）と3LDKのYOHACO SQUARE（税込1,650万円〜）の2商品があります。
カラーガルバリウム鋼板の屋根と外壁が特徴で、内装には無垢材が採用されています。
家を作るだけでなく、アフターにも力を入れており、何かあった時にはすぐに駆けつけ、地域に根ざすことを目指している会社です。
子育て安心住宅
施工事例（掲載元：SUUMO）／延床面積：127.53㎡（38.5坪）、坪単価51.9〜64.8万円
浜松に拠点を置く、2007年設立の工務店です。住宅は「子供たちの心のふるさと」という想いが社名に込められています。
写真の建物は、床にヒノキの無垢材を使用し、梁は表しとなっています。オーナーの自然素材の家というイメージに合わせた内容で、高気密・高断熱仕様で冷暖房の効きがよいとのことです。
同社には、ZEH対応の1,000万円台の住宅仕様も用意されており、オプション工事なしで、そのまま住める家を目指しています。
他にも気になる工務店
上記で紹介しきれない工務店の概略を以下で紹介します。
アフターホーム
掲載元：アフターホーム
自由設計にこだわり、品質も価格もあきらめないスタンスの工務店です。1995年に設立し、施工エリアは富士市が中心です。家は建てて終わりではなく、アフターサービスを重視していることから社名がつけられており、参考本体価格は、坪単価53〜58万円となっています。
第一伊藤建設
掲載元：第一伊藤建設
1969年の設立で、浜松と掛川を中心に事業展開しています。静岡県西部の気候風土や地域性を考慮し、高気密・高断熱、省エネ、耐震性能にこだわると共に、手の届く住宅づくりを目指しています。
参考坪単価は50〜65万円となっており、契約の7割が紹介によるという地域での評価が高い工務店です。
花みずき工房
掲載元：花みずき工房
1994の創業から3,000棟を超える住宅を、100％の自社設計とオーダーメイドで提供しています。静岡県下では、中部と西部が施工エリアで、想いを形にできる住宅会社を目指しています。
同社のHP上での参考価格は坪単価60〜75万円で、本記事のローコスト住宅からは少し高めの設定です。しかし、デザイン性の高い同社の住宅は十分にコストパフォーマンスの高い内容といえます。
メジャーな広域住宅メーカー系
広域で事業展開している住宅メーカーの中で、静岡県下でローコスト住宅の実績を残しているメーカーを紹介しましょう。
なお、冒頭で述べたように、県下での着工棟数が多くても比較的高価格帯（坪単価60万円〜）の住宅メーカーはあえて紹介しないこととしました。
ジブンハウス
7×9plus 延床面積：113.44㎡（34.31坪）、坪単価：41.10万円（税込）
ジブンらしさを表現できる家づくりをモットーにデザイン規格住宅を提供している会社で、北海道から沖縄までをカバーしているフランチャイズメーカーです。静岡県下では、富士市（株式会社And.S）と島田市（エス・エー・シー）に加盟店があります。
写真の建物は、7×9plusの規格住宅で、無駄のない家事動線や収納スペースの大きさ・配置が適切で、税込本体価格の坪単価41万円台は十分にローコストなものです。
パパまるハウス
施工事例（掲載元：SUUMO）／延床面積：141.18㎡（42.7坪）、坪単価：37.4万円
同社は創業1982年に設立し、東北の一部、関東、中部、そして大阪で展開しているフランチャイズメーカーです。親会社は桧家グループになり、パパまるハウスの店舗は静岡市と富士市にあります。
写真の建物は、比較的延床面積が大きいものですが、それでも本体の基本価格が坪単価37万円台というのはローコスト住宅の中でも安い部類にはいります。
テレワークが中心のオーナーが、同社のZ空調で温度のバリアフリー化を実現した住宅で暖かく過ごせているとのこと。
株式会社イシカワ
商品名：Bright、4LDK：1,666万円（税込）〜
同社は、新潟県で1947年に設立されています。事業展開は、ほぼ日本全国で、静岡県では、静岡市に展示場があります。
写真は、同社のベストセラー商品Bright仕様で、本体価格が1,666万円からとなっています。延坪数は不明ですが、4LDKが税込で1600万円台は十分にローコストな価格と言えるでしょう。
住設備機器の仕様は一般的なグレードですが、オール電化とエコキュートが標準装備となっています。
他にも気になる住宅メーカー
以上、静岡県下でローコスト住宅の実績を残している広域展開の住宅メーカーを紹介しました。なお、県下でより多くの実績を残しているローコスト住宅メーカーもありますが、メジャーでよく知られていることから詳細を省き、概略のみを以下で紹介します。
一条工務店
掲載元：一条工務店
同社の坪単価は60〜80万円で、いわゆるローコスト住宅より少し高めです。ですが、住宅に必要な基本性能が揃ったモデルハウス仕様を標準仕様としている同社の住宅には割安感があります。
住設備機器や収納の充実、耐震性能等級3、業界トップクラスの省エネ性能、全館床暖房、高性能フィルター付きの全館換気システムなどと標準仕様とは思えないほどです。
タマホーム
掲載元：タマホーム
1998 年に福岡で設立され、10数年の間に驚異的なスピードで全国展開してきたローコスト住宅メーカーです。
その原動力は、設立当初の坪単価30万円台と言う驚異的な価格と良質な住宅で、現在でも良質低価格な住宅をモットーに店舗数が増えており、静岡県下では11店舗があります。
アキュラホーム
掲載元：アキュラホーム
同社が運営しているジャーブネット会員（ホームビルダーネットワーク）は、全国250社に及び、そのスケールメリットを生かしてコストダウンを図っています。静岡県下での会員は4社あり、
中でも福工房（参照：福工房）が活躍しています。福工房は、県下で10ヶ所の展示場をもっており、参考本体価格は、55〜75万円／坪となっています。
アエラホーム
掲載元：アエラホーム
同社は、アルミ箔で覆った高性能断熱材を使った外断熱の家で有名なフランチャイズメーカーで、静岡県下には、浜松と静岡に展示場があります。
アエラホームのローコスト商品には「コスパス」があり、低価格でありながら自由設計、長期優良住宅認定を受けられる高性能（耐震性能2、省エネルギー等級4など）が標準仕様となっています。施工事例（2階建て延床面積31坪）では、坪単価50万円前半になっていました。
アイダ設計
掲載元：アイダ設計
正直価格で満足のいく家づくりを目指している住宅会社で、参考本体価格は32〜65万円／坪となっています。静岡県下の営業所とモデル店は、合わせて5ヶ所です。
社名の通りに設計をルーツとして、自社プレカット工場を持つなどの一貫体制でローコスト化を図っています。また、実大振動実験で耐震性能を立証するなど、技術開発にも積極的なメーカーです。
まとめ：よりローコストで満足のいくマイホームとするために
以上、静岡県下で実績のあるローコスト住宅メーカーと工務店を紹介しました。印象としては、施工エリアを絞っている工務店が多いと感じました。
名古屋圏に近い西部エリアと東京圏の影響を受けやすい東部エリアとでは、150km以上の距離があるため、それぞれの住宅文化に対応した結果かもしれません。
住宅の着工棟数ランキングで上位を占めるのは、他県同様にメジャーなメーカーでした。ですから、初めての工務店では不安が先立ち、安心できるメジャーな住宅メーカーを選ぶ気持ちは理解できます。
しかし、少し時間を掛けて地域の工務店を探していけば、よりローコストで満足できるマイホームを建てられる可能性があるのです。
本記事が、そのための参考になれば幸いです。
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