注文住宅の見積もりなどで価格を知った際、値段が高すぎると感じる方はいるのではないでしょうか。
建売は安いけれども、せっかく家を購入するのであれば、仕様やデザインを自由に選べる注文住宅がいいですよね。
また、大手ハウスメーカーになればなるほど高くなるのはなぜでしょう。
本記事では、注文住宅が高すぎると感じてしまう方のために、高い理由や安く家を建てるポイントなどをご紹介します。
その理由を知って、これから注文住宅の新築を計画する時の参考にしてください。
なぜ?注文住宅が高すぎる理由
基本的に、注文住宅はゼロからの設計・建築で、オンリーワンのものです。これが、高くなる大きな理由のひとつです。
注文住宅は、注文して住宅を建てるので、同じ注文住宅が建てられることはありません。
設計力やノウハウは住宅の付加価値を上げるものですが、その分価格を上げる要因になるのです。さらに、設計や仕様のオリジナリティーが上がれば上がるほど、高くなります。
それでは注文住宅が高すぎる部分を以下から、もう少し詳しく説明していきます。
多くの職人がかかわって建てる
上の図は、住宅建築に関わる人達の、ほんの一例です。実際には、着工から完成までの工事に関わる職種は、十数種類以上にもなります。
そして、家づくりにかかわる人数は、50人以上、延べ累計では数百人にもなります。
これだけの人数がかかわれば、その人件費で建設費用は高くなりますよね。
例えば、1人が左官や大工、そして塗装などの仕事が行えれば、時間を効率的に使うことができ、通信・交通費などの経費も担当する工事全体でみることができます。
結果として、工事費を比較的安くできるのです。
しかし、実際には分業化が進み、十種類以上の職人にお願いすることとなり、それぞれに通信・交通費や経費が必要になります。
簡単に言えば、役割分担をしているということです。
また、オリジナリリティの高い住宅で、特殊な工事が増えれば職種も増えます。そして、特殊な工事の費用は、高くなるのが一般的です。
これだけ多くの職人がかかわって家を建てるので、注文住宅は値段が高くなるのです。
土地代が高い
土地を購入して注文住宅を建てる場合は、土地代がプラスされます。
参考に、2017年度のフラット35の利用者調査の統計結果から、地域別の土地の購入価格と敷地面積を抜粋して下表で紹介します。
地域 | 土地の購入価格(万円) |
全国 | 1,304.9 |
首都圏 | 2,092.9 |
近畿圏 | 1,516.5 |
東海圏 | 1,206.4 |
その他 | 885.9 |
上の表で土地の坪当たり単価は、10万円台前半から40万円台後半となっています。都市圏に近づくほど土地購入の負担が大きいことがよくわかりますね。
土地から注文住宅を購入する場合は、土地代がどうしてもかかってしまうので、値段が高くなってしまいます。
いずれにしても、土地を購入してからの注文住宅の建築は、十分な返済シミュレーションを行っておくことをすすめます。
大手ハウスメーカーの中間マージン
上の図は、大手ハウスメーカーと工務店の建築費を分解して比較したものです。ここでは分かりやすくするために、同規模・同仕様の注文住宅を前提としています。
なお、建築総額や配分額はサンプル例ですから、ハウスメーカーや工務店、さらに規模や仕様によって異なります。標準的なイメージとして参考にしてください。
上の図では、大手ハウスメーカーと工務店では、600万円の差が出ています。実に、工務店の建設費よりも25%も高くなっているのです。
では、もう少し中身をみていきましょう。少し、長くなりますが、参考になると思います。
実質工事価格
これは、建築資材や設備機器の購入に必要な費用と、それらを施工する職人達に支払う費用を合わせたものです。
もし、ユーザー自らが資材や職人を手配して現場管理するのであれば、この費用だけで家が建つ訳です。
上の図では、ハウスメーカーのほうが安くなっています。なぜでしょうか。ハウスメーカーと工務店を比べた場合、各資材や設備機器の取扱量(販売量)が圧倒的に違うため、仕入れ価格が異なります。
100件分のシステムキッチンを買ってくれる客と10件分を買うお客とでは、当然値引き額が異なります。
たとえば、スーパーで単品売りの価格よりも箱買いの時の単品価格は安くなっていますよね。建築資材や設備機器を買う時も同じことが言えるのです。
つまり、実質工事価格の差は、ハウスメーカーと工務店の仕入れ力の差と言えます。いわゆる、スケールメリットですね。一方、職人の人件費はほぼ同じです。
これが、大手ハウスメーカーの実質工事価格のほうが安くなっている理由です。ところが、トータルの建設費では大手ハウスメーカーのほうが高くなっています。
図からも分かるように、大手ハウスメーカーが高くなっているのは、下請けマージンが大きな理由です。
下請けマージンとは、不動産取引の仲介手数料に似ています。大手ハウスメーカーでは、自社で施工職人をかかえていないために、職種ごとに工務店や専業者に下請け発注しなければなりません。
当然、下請け業者にも経費や利益が必要ですから、発注する業者が増えれば増えるほど、仲介料(経費や利益)が重なり高くなります。
なお、工務店でも全職種の職人をかかえているわけではありません。
しかし、外部発注する場合でも、比較的経費を抑えられる個人業者に依頼することが多く、全体としては粗利を抑えることができるのです。
簡単に言えば、利益を抜いて下請けである職人に丸投げしているのです。
では次に、粗利(あらり、或いは、そり)について紹介していきます。
粗利
粗利とは、建築費から工事に必要な資材や設備機器、そしてそれらを施工・設置するための人件費などを引いたものです。
つまり、単純に売り上げから仕入れを差し引いた利益のことです。
たとえば、八百屋で1,000円の果物が売られていたとします。そして、八百屋さんがその果物を600円で仕入れて持ち帰ったとすれば、粗利は400円になります。
一方、この粗利には、仕入れの際に使ったガソリン代や車の償却費、そして自身の人件費(給料)も含まれます。さらには純粋な利益も含まれます。
このように、粗利の考え方はハウスメーカーと工務店でも基本的にかわりません。上の図を見ていただくとわかりますが、大手ハウスメーカーと工務店の建設費や粗利は、さほど大きな差はないのです。
大きく異なるのは、やはり下請けマージン(仲介手数料)です。下請けマージンのためにトータルで500万円も高くなっているのです。
このように注文住宅の内訳がわかると、工務店に依頼したほうが中間マージンがかからず、安く家を建てられことが理解できますよね。
大手ハウスメーカーのほうが有名で安心できるかもしれませんが、地域の工務店では安く家を建てられるため、ハウスメーカーだけでなく工務店の情報も集めるようにしましょう。
注文住宅の相場はいくらくらい?
資金計画時や相見積りを取る場合も、相場がどのくらいになっているのか、気になりますよね。
全国平均や住んでいる地域の相場をチェックしてみましょう。最終的な判断は、相見積りの額やその内容によりますが、大まかな判断材料にはなるでしょう。
土地がある場合
地 域 | 建設費(万円) | 延床面積:㎡(坪) | 坪単価(万円) |
全 国 | 3,353.5 | 128.2(38.78) | 86.47 |
首都圏 | 3,627.0 | 127.0(38.41) | 94.42 |
近畿圏 | 3,408.1 | 126.9(38.38) | 88.79 |
東海圏 | 3,437.2 | 130.1(39.35) | 87.34 |
その他 | 3,193.0 | 128.5(38.87) | 82.14 |
上の表から、土地ありの注文住宅では、延床面積がほとんど変わらず、都市圏ほど建築坪単価が高くなっているのが分かります。
注文住宅の地域別の平均延床面積が、ほぼ同じというのは面白い結果だと思います。
なお、都市圏で坪単価が高くなっているのは、人件費が大きく影響しているからです。同じ工事内容でも、地方と都市部では単価が2倍近くになります。そのため、首都圏は建設費用が高くなってしまうのです。
表の坪単価を高いと感じるかもしれませんが、この価格には住宅の本体価格だけでなく、外構や屋外給排水なども含めた費用が含まれています。
つまり、建築総額です。すでに土地がある方が、注文住宅を建てる場合の参考にしてください。
次に、土地を新たに購入して注文住宅を建てる場合の統計をみてみましょう。
土地がない場合
地 域 | 建設費(万円) | 延床面積:㎡(坪) | 坪単価(万円) | 土地の価格(万円) |
全 国 | 2,734.3 | 113.3(34.27) | 79.78 | 1,304.9 |
首都圏 | 2,624.9 | 107.8(32.60) | 80.51 | 2,092.9 |
近畿圏 | 2,632.2 | 112.0(33.88) | 77.69 | 1,516.5 |
東海圏 | 2,864.8 | 116.3(35.18) | 81.43 | 1,206.4 |
その他 | 2,791.3 | 115.6(34.96) | 79.84 | 885.9 |
フラット35利用者調査より引用
この表は、土地を購入して注文住宅を建てた人の統計です。この表を見て、気づくことがありますよね。
まず、先の土地ありの表Aに比べて土地なしの表Bの場合には、家の延床面積が小さくなっていること、次に建築坪単価が安くなっていることです。
限られた予算の中で、土地を購入し注文住宅を建てるのですから仕方ないですね。どうしても値段が高くなってしまいますし、建物の大きさも限られてしまいます。
だからこそ、できるだけ安く建てることを考えなければならないのです。
以上の土地あり・なしのそれぞれの注文住宅の建築費などの統計を見て、いかがでしたか?
これらの統計情報は、全ての方にあてはまるものではありませんが、これから注文住宅を建てる場合のベイシックな情報にはなります。参考にしてください。
注文住宅を安く建てる方法
注文住宅を安く建てるためには、いくつかのポイントがあります。業者選びからオプション選びなどと色々ありますが、そのいくつかを紹介していきます。
せっかくの注文住宅を、安く建てるためだけではつまりませんよね。希望する住宅を安く建てる以下のポイントを参考にしてください。
相見積もりを取る
注文住宅を建てる時には、相見積りが鉄則です。
相見積りとは、複数のハウスメーカーや工務店に見積りを依頼し、比較検討することです。
見積り依頼に際しては、ユーザー側から間取りの規模や仕様、そして予算限度額などの条件を提示します。
これに対して、ハウスメーカーや工務店は見積り条件を満たした中で、プラスアルファの提案を見積書に盛り込んできます。特に、ハウスメーカーにその傾向が強くあります。
それらの見積書の説明を受ける中で、本当に必要なものとそうでないものとの判断がつくことがあります。
つまり、付けておけば良かったと言う後悔や、無駄なコストだったと言う失敗をなくすことも可能なのです。
例えば、断熱樹脂サッシをすすめられたが、予算の都合で標準的なペアガラスサッシにしたため、実生活ではサッシの結露で困ったと後悔することがあります。
あるいは、カーポートにエクステリアの屋根を付けてもらったが、実際には雨の日の乗車・降車時の雨除けにはならず、失敗だったと思うこともあります。
このようなことは、ひとつのハウスメーカーや工務店だけの見積りでは気づかない時があります。
ですから、気に入ったハウスメーカーや工務店がある場合でも、複数の業者に相見積りを依頼して、できるだけ比較検討する内容や範囲のバリエーションを持たせるようにしてください。
ただし、あまり多くの相見積りでは大変ですので、3〜5件くらいでいいでしょう。
なお、安く建てるためには相見積りで一番安いところを選ぶのが基本ですが、十分に内容の説明を受け、単に安いだけで選ぶと後悔することもあります。
希望する内容になっているのかも十分に確認しておきましょう。
セットプランを活用する
ハウスメーカーでは、規格プランとして価格を設定しているものがあります。
完全なフリープランとはなりませんが、若干のアレンジを可能としているメーカーもありますので、それを利用すると比較的割安で建てられることがあります。
たとえば、高級住宅ハウスメーカーとして知られている三井ホームには、「NATURAL HYGGE STYLE」という商品があります。
これは、外観や外周を変えずに間取りを自由につくれるようにしたものです。
耐震性や省エネ性能は十分なもので、なによりも太陽光発電システム(3kW)を標準装備して、延床33坪で1,980万円〜としています。
坪単価に換算すると60万円〜です。もちろん、住宅の本体価格だけですが、非常に割安感があります。
おなじように、他のハウスメーカーでも規格プランを販売していますので、検討してみる価値はありますよね。価格を抑えつつも、こだわりたいところはこだわれるのでおすすめです。
無駄な設備は節約する
せっかくの注文住宅だからと、色々な設備機器を付けたくなるのは分かります。
しかし、実際にはあまり使用しない設備であったり機能だったりすると、それはコストパフォーマンスの悪い結果となります。
つまり、無駄に高くなってしまうのです。
設備機器で、一番後悔しやすいのがユニットバスです。
たとえば、ミストシャワーや暖房床、あるいは浴室専用TVやオーディオ設備は必要でしょうか。もちろん、あれば便利で快適かもしれません。
しかし、限られた予算の中で優先すべきものではないように思います。また、それらの利用頻度や時間を考えると非常にコストパフォーマンスの悪いものです。
さらに、故障した時のメンテナンスも考えなければなりません。
ですから、本当に必要な設備は何か、また機能は何かを十分に検討しておいてください。
ローコストハウスメーカーで建てる
規模の小さい工務店では、「やはり心配だ」と言う場合はローコストハウスメーカーがおすすめです。
ローコストだから品質や性能が悪い、とは言えないメーカーが沢山あります。むしろ、企業努力で価格以上の品質や性能の住宅を提供しているところがほとんどです。
ローコストハウスメーカーには、タマホーム、レオハウス、アキュラホームなどがあり、いずれも広域で事業展開しています。
また、実績も十分なものがあります。もちろん、その他にもローコストハウスメーカーはあります。WEBで情報を集めると共に、特色なども確認しておいてください。
大手ハウスメーカーでは手が届かないが、工務店では少し心配、という場合はローコストハウスメーカーも相見積りの対象に入れることをおすすめします。
まとめ
注文住宅は多くの職人がかかわり、オンリーワンの住宅をつくるため高くなります。また、大手ハウスメーカーでは下請けに発注する際の中間マージンも含まれるため、非常に高くなります。
しかし、一生に一度の買い物だから高くなっても仕方がないと諦めてはいけません。同じ注文住宅でも建設する会社によって建築費用は異なります。
大手ハウスメーカーではなく、地域の工務店やローコストハウスメーカーに依頼すると建設費用は大幅に安くなります。
土地から購入する人は、なおさら価格が高くなるので、こういった安く建てられる会社で家を建てる工夫も必要でしょう。
注文住宅が高すぎると思っている方は、必ずハウスメーカーや工務店などから相見積りをとり、比較検討してください。その中から、あなたが納得する価格で家を購入できる業者を探しましょう。
本記事で紹介したハウスメーカーと工務店の建築費の内容や差額の理由、そして全国平均に現れる相場感が、これから注文住宅を計画されている方の参考になれば幸いです。
住宅は一生に一度の高価な買い物です。数千万円単位になるため、できれば値段を安くしたいものです。
実は値段の高い注文住宅ですが、建売よりも安く家を建てられる方法があるってご存知ですか?
建売でもいいですが、せっかくであれば自由に仕様や間取りを選べる注文住宅がいいですよね。
ただ、注文住宅は失敗してしまう方がほとんどです。夢のマイホームで後悔したくないですよね。
※お断り自由・完全無料