住宅を建てたりリフォームしたりする際に、「耐力壁(たいりょくかべ・たいりょくへき)」という言葉を耳にします。ただ、具体的にどのようなものなのか理解していない方がほとんどです。
耐力壁は、住宅の構造上とても重要な役割を担う壁です。これから家を建てたりリフォームしたりする方は、耐力壁のことをしっかり理解しておきましょう。
ここでは、耐力壁について種類や量などを図解でわかりやすく解説します。このページを読み終わるころには、耐力壁について詳しくなっているのではないでしょうか。
1.耐力壁とは
耐力壁とは、建物の構造上、強度を保つために必要不可欠な壁のことです。この壁がないと、家は簡単に倒壊してしまいます。なぜなら、建物は頭上からの重さには強いですが、横からのエネルギーには非常に弱いからです。以下がそのイメージです。
住宅の場合、地震や台風などによって横の力が加わります。これを水平力といいますが、この力に耐えられる構造ではなくてはいけないのです。そこで、以下の図のような耐力壁を取り入れることで、水平耐力を高めた建物になります。
横方向の力に対応するために、柱と梁(はり)に加えて、筋交い(梁と柱の間に斜めに入れて補強する部材)を金物で取り付けます。
耐力壁とは、筋交いを入れることにより、横方向の力に強くなった壁のことをいうのです。また、地震に強い壁になることから、耐震壁や耐震ブレースなどと呼ばれることもありますが、すべて同じ耐力壁のことになります。
なお、耐力壁とは異なり、構造上そこまで重要ではない壁が「非耐力壁(ひたいりょくへき)」です。
1-1.耐力壁の間違えた認識
家の耐震を考えたとき、多くの方は「柱や梁(はり)を太くすることで耐震性が高まる」と勘違いしています。
ただ、たとえ柱の太さや梁の強度を高めたとしても、ラーメン構造(地震に強い構造体)などでない限り、地震に強い建物にはなりません。そのため、耐震性を高めたいのであれば、耐力壁の量を増やす必要があります。
耐力壁や耐震性の部分でよく勘違いしやすいので、間違えないようにしましょう。
2.耐力壁の3種類
耐力壁は、いくつか種類があります。構造物ごと分かれ、「木造建築物」「鉄筋コンクリート造建築物(RC造)」「鉄骨造建築物」の3つになります。
それぞれ耐力壁の特徴が異なるため、順番に解説します。
2-1.木造建築物における耐力壁
木造住宅の場合、構造の違いによって耐力壁の種類が異なります。このとき、大きく分けて「軸組工法」「2×4工法(ツーバイフォー)」になります。以下がそのイメージです。
線で構成される軸組工法と面で構成される2×4工法では、横揺れに対する耐久性が異なります。軸組工法は横揺れに弱く、2×4工法は、強い特徴があるからです。
柱で造られている軸組工法と面の構造のものでは、耐力壁の形状が異なります。そのため、耐力壁の種類が変わってくるのです。
2-1-1.軸組工法の耐力壁
前述の通り、軸組工法の場合、柱(線)で作られているため横の力に弱いです。そのため、以下のような種類の耐力壁になります。
筋交いを入れることにより、横揺れに強い壁になります。軸組工法の場合、この形状の壁が耐力壁になるため、覚えておきましょう。
ただし、リフォームで間取りを変更する場合、この壁があるとその部分の壁を無くして改修工事を行うことは難しくなります。
耐力壁を移動するには、大規模な工事が必要になるからです。リフォームを行う際は、この耐力壁の位置を気にして行うようにしてください。
2-1-2.2×4工法(ツーバイフォー工法)の耐力壁
一方、ツーバイフォー工法の場合は、面で構成されるため、以下のような形状の耐力壁になります。
ツーバイフォーの場合、板を張り合わせて作られるため、構造用合板(構造耐力上主要な部分に用いる目的で作られたもの)や石膏ボード(石膏を主成分とした素材を板状にして、特殊な板紙で包んだ建築材料:ほとんどの住宅のクロスの下地がこの建材)を使用した耐力壁になります。2-2.鉄筋コンクリート造建築物の耐力壁
RC造の場合の耐力壁は、「ラーメン構造(梁と柱が強固に一体化している構造)」「壁式構造」によって異なります。マンションの場合、鉄筋コンクリート造になるため、この2種類の耐力壁の違いを理解しておきましょう。
2-2-1.ラーメン構造の耐力壁
ラーメン構造は、頑丈に梁と柱が一体になっている構のなため、横揺れに強いです。以下の図がラーメン構造です。
この構造の場合、部屋を仕切る壁が耐力壁になります。以下がイメージ図です。
出典:リフォーム徒然日記
図からわかるように、部屋を仕切っている壁が耐力壁になり、玄関やベランダの部分が非耐力壁になります。したがって、部屋の内部には住宅のように耐力壁が存在しないため、リフォームによって間取りを変更することが可能です。
2-2-2.壁式構造の耐力壁
鉄筋コンクリート造の壁式構造は、梁や柱がない構造になります。つまり、柱がなく壁のみで形成される箱状の骨組みです。また、部屋の外側にある壁のほとんどが耐力壁でできています。
この構造により、強い強度のある構造物になります。なお、壁式構造は中低層マンションに多く、規模も比較的小さいのが特徴です。
また、ラーメン構造のように梁がないため、広い間取りを確保することが難しいです。そのため、小さな部屋のマンションに多い構造になります。
2-3.鉄骨造建築物(s造)の耐力壁
出典:注文住宅なるほどサイト
鉄骨造は、鉄骨を組み合わせて施工する建物です。大きく分けて梁と柱が一体化させたラーメン構造に加えて、筋交い方式によるブレース工法の耐力壁になります。
2-3-1.鉄骨ブレース
出典:京都の建築設計事務所
鉄骨造建築物の場合、斜めにブレースと呼ばれる筋交いを採用したものが耐力壁になります。これにより、横揺れに強く、耐震性のある構造物になります。
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3.耐力壁の量は構造計算によって決まる
耐力壁は、構造計算(台風や地震でも構造的に問題がないかを計算すること)を行い量や配置を決めます。
しかし、マンションの場合と木造建築物では、耐力壁の配置や量の決め方は異なります。どのような違いがあるのかをここで紹介します。
3-1.マンションの場合
マンションの場合、構造計算によって耐力壁の量や配置が決まります。階数や面積が増えるほど、多くの耐力壁が必要になるのです。また、重量のある場合、さらに耐力壁の量が必要になります。
ただ、ラーメン構造の場合、梁と柱をより太くして強度を高めると、その分耐力壁を減らすことが可能です。
3-2.木造建築物(木造住宅)の場合
一般的な木造建築2階建て(4号建築物)における住宅の場合、設計士が設計していれば確認申請(建物の構造などが問題ないか確認する申請)や構造計算を省略することができます。
ただし、最低限のチェックは行います。設計士が設計をしたからといって、まったく耐力壁の確認をしなくてもいいわけではありません。耐力壁の量や配置、バランスなどを建築基準法通りなっているかは、簡単な計算で確認します。
なお、ツーバイフォーの場合、耐力壁の場所や量はより厳しい審査が定められているため、より高い耐震性や耐風性を可能としています。
まとめ
耐力壁は、構造上なくてはならない壁になります。これがないと建物が簡単に倒壊してしまう可能性があるからです。
また、耐力壁は、構造物によって種類や形状が異なります。そのため、建物の耐力壁の種類を判断するようにしましょう。
あなたの住んでいる建物は、耐力壁によって地震や台風などが起こったとしても、問題ないように造られているのです。
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