注文住宅

一条工務店の注文住宅、坪単価からみたコストパフォーマンス比較

一条工務店の注文住宅は、比較的高価格帯のクラスに入りますが、上場大手ハウスメーカーにあるようなハイエンド商品ではありません。

しかし、同社の本体坪単価に対する標準仕様の住宅性能や装備を他社と比べた場合、非常にコストパフォーマンスが高い、というのが定評です。

本記事では、一条工務店の主力商品である「 アイスマート 」の本体坪単価と同価格帯の他社住宅商品とを比べて、その実力をチェックしてみます。

注文住宅のマイホームを同社で検討されている方の参考になればと願っています。

一条工務店と注文住宅の概要

この数年、一条工務店は年間の戸建て販売戸数ランキングで常に上位を占めており、年度によってはトップになっているほどです。

同社は上場企業ではありませんが、積水ハウスや大和ハウスなどの超大手を抑えてのトップですから、大手ハウスメーカーといってもいいでしょう。

特に、商品別販売棟数では、同社のアイスマート(i-smart)が他社の商品を大きく上回る数字を残しています。

余談ですが、グラフ左の販売戸数に対するアイスマートの販売比率は75%前後にもなっており、まさに一条工務店の看板商品ですね。

一条工務店は1978年設立で、東京と静岡に本社を構えて全国展開しており、下請け任せではなく、直接契約・責任施工体制をとっています。

同社の注文住宅商品には、木造枠組壁構造(2✕6)と木造軸組構造の2種類あり、今回の比較対象とするアイスマートは、木造枠組壁構造になります。

一条工務店の住宅に対するスタンス

一条工務店のキャッチフレーズには、「 家は、性能 」「 モデルハウス仕様が標準仕様 」があり、同社の住宅に対するスタンスを表したものです。

では、具体的にはどのような内容なのでしょうか。はじめに紹介しておきましょう。

「 家は、性能 」へのこだわり

住宅に必要な基本性能は、耐震性能と省エネ・断熱性能です。この2つの性能に関して、一条工務店では特にこだわりを持っています。

耐震性能は最高等級3を上回る性能

具体的には、上図のように耐震等級3に必要な建築基準法の1.5倍を上回る2.0倍の耐震性能としています。この2.0倍を社内基準にしているのです。

そのために、注文住宅でも好きな間取りにできない場合があり、ユーザーが不満に感じることもあるようです。

北海道地域(Ⅰ地域 )をクリアするZEH基準の断熱性能

枠組壁構造アイスマートの断熱性能は、標準で北海道地域のZEH基準をクリアする仕様としています。つまり、グレードアップなしで、日本全国をカバーできるわけです。

外壁の断熱を例にあげると、2✕6の枠組壁の中に140mmの高性能ウレタン材を充填し、外側にも50mmの同ウレタン材を張るダブル断熱仕様が標準です。

温暖な地域では少しオーバースペックのような気もしますが、冷暖房のランニングコストが下がるのですから、良いことはあっても悪いことではありませんね。

モデルハウス仕様が標準仕様

ハウスメーカーの魅力的なモデルハウスには、オプションでグレードアップした設備や装備で着飾ったものが多くあります。

一条工務店では、それらが少なく、日常生活に必要な設備や装備品はすべて標準仕様に含まれています。

キッチン:広いカウンタートップ、大容量収納、深型食洗機

一条工務店のオリジナルキッチンは、I型・オープン・アイランドから選ぶことができ、いずれも業界最大級の収納量を誇ります。

食器洗い乾燥機も一度に6人分の食器を洗うことができる深型タイプが標準です。他社では、オプションで深型にグレードアップする声を聞きますから、嬉しい対応ですね。

2階のトイレも標準仕様

一条工務店では、1階・2階のいずれにもトイレ設置が標準です。これも、近年のユーザー希望やライフスタイに合わせたものでしょう。

なお、タンクレストイレはオプションとなります。必要にして十分な仕様というのを目指しているのでしょう。

シューズクローク、ウォークインクローゼットも標準仕様

一条工務店の標準装備で、大きな特徴になっているのが収納スペースです。シューズクローク、パントリー、ウォークインクローゼットと、他社ではオプション扱いになっているものも標準仕様(設計)に含まれています。

それらの収納以外に、個室のクローゼットや物入れも配置されていますから、一般的な生活スタイルなら、十分すぎるほどの収納スペースです。

その他では、全館床暖房を標準仕様にしているのも、他社にはないユニークなものだと思います。

標準仕様におけるアイスマートと他社商品比較

上記で紹介した一条工務店の標準仕様における住宅性能や仕様が他社に比べてどうなのか、改めてチェックしてみましょう。

メーカー名 一条工務店
積水ハウス ミサワホーム タマホーム
商品名 アイスマート イズロイエ GENIUS 大安心の家-P
本体坪単価相場 70〜80万円 75万円〜 70〜80万円 55〜70万円
基礎構造 布基礎 布基礎 布基礎 ベタ基礎
躯体構造 枠組壁構造(2×6) 軽量鉄骨造 木質パネル構造 木造軸組構造
耐震性能 等級3+(必須) 等級3(基本) 等級3(基本) 等級3(基本)
制振装置 シーカス MGEO
断熱性能 ZEH(全地域) ZEH(地域適用) ZEH(Ⅳ地域以南) ZEH(地域適用)
サッシ 樹脂枠トリプル硝子 アルミ樹脂枠ペア硝子 樹脂枠ペア硝子 アルミ樹脂枠ペア硝子
気密性能 0.59c㎡/㎡ 不明 不明 不明
換気システム 第1種熱交換型 第3種換気 第1種熱交換型 第1種熱交換型
全館床暖房
外壁 タイル ダインコンクリート 窯業系サイディング 窯業系サイディング
長期優良住宅
無料点検・保証 構造30年・防水15年  構造・防水30年 構造35年・防水30年 構造・防水10年

表から受ける印象は、標準仕様における耐震性能と断熱性能は、一条工務店が一歩ひいでているように思います。特に、耐震等級3+を必須としているこだわりは頑固なほどです。

ただし、他社が標準仕様としている制振装置がないのが少し残念ですね。

断熱性能に対するこだわりも他社にはないもので、表の4社の中では唯一、もっとも断熱性の高い樹脂枠のトリプル硝子サッシを標準仕様としています。

アイスマートの性能要点

     一条工務店:アイスマート

アイスマートに限らず、一条工務店の耐震性能は、社内基準で最高等級3を上回る内容としており、断熱性能はもっとも厳しい条件のⅠ地域をクリアするもので、すでに紹介した通りです。

ここでは、アイスマートの気密性能と熱交換型の第1種換気扇(ロスガード90)について紹介しましょう。

一条工務店では、現在の省エネ基準やZEH基準からなくなった気密性能(C値)をあえて公表し、気密性の重要性を訴えています。(一条工務店の気密性能

どんなに優れた断熱材を使用していても、隙間だらけの住宅では住宅全体としての断熱性能は上がりません。ですから、住宅全体の断熱性能を上げるためには一定の気密性が必要になるのです。

同社が、換気システムに給気・排気ともに機械換気扇の第1種換気方式を採用しているのは、自然の給気・排気よりも気密性が高いからです。

さらに、冷暖房の効率と気密性をより上げるために、熱交換型の給排気換気扇システム(ロスガード90)を採用しています。(ロスガード

イズロイエの性能要点

     積水ハウス:イズ・ロイエ

イズロイエの標準仕様の特徴としては、鉄骨造(ダイナミックフレームシステム)であること、自社オリジナルの制振装置、そして人気のダインコンクリート外壁があります。

積水ハウスのダイナミックフレームによる大開口は一般的な木質系の住宅では難しく、大きな魅力になっています。

また、制振装置との組み合わせによる耐震性能は、耐震等級では表せない強さと粘りがあります。

積水ハウスのダインコンクリート外壁は、耐久性やメンテナンス性に優れており、重厚感のあるテクスチャーと合わせて人気で、この外壁だけで選ぶユーザーがいるほどです。

     積水ハウス:ダインコンクリート外壁

構造躯体と防水を共に30年の無償点検と保証としているのは、さすがに大手ハウスメーカーらしい対応です。

以降は、有償点検と有償メンテナンスとなりますが、1世代はメンテナンス費用の心配せずに暮らせるのですから、安心だと思います。

断熱性能は、ZEH基準に標準仕様で適応となっています。これは、地域区分で求められている断熱性能に応じて断熱材の仕様を変えていると言うことです。

ですから、同じ商品でも地域区分が変われば販売価格も変動するということですね。

GENIUSの性能要点

     ミサワホーム:GENIUS

GENIUSの標準仕様での断熱性能は、地域区分Ⅳ以南に対応できるもので、Ⅰ〜Ⅲ地域に適用させるためには、オプションでグレードアップさせる必要があります。

なお、比較表に上げた4社の中では唯一、躯体構造を35年の保証としています。

ミサワホームは、業界で初めて制振装置を一般住宅用に開発・装備したメーカーで、各ハウスメーカーの制振装置開発に大きく影響をあたえました。ですから、耐震性能は先の積水ハウス同様に安心できるものです。

また、天井と床の中間層、あるいは小屋裏などを利用した「蔵」の発想を広めたのもミサワホームが最初で、技術やソフトの開発に積極的な住宅メーカーです。

一方で、住宅性能以外でもデザインやコーディネートのセンスが優れていることも定評となっています。

大安心の家(プレミアム)の性能要点

     タマホーム:大安心の家プレミアム

ローコスト住宅メーカーとして飛躍してきたタマホームですが、現在ではミドルクラスの住宅商品もバリエーションに含まれるようになりました。

画像の「 大安心の家プレミアム 」は、タマホームの最上位商品ですが、比較に挙げた4社の中では最もリーズナブルな価格帯です。

4社の中では唯一ベタ基礎を標準仕様としており、ZEH基準に対する断熱性能は、積水ハウス同様に地域区分に合わせた仕様としていますので販売価格も変動します。

比較表による住宅のスペックは、他社と比べて大きく劣るものではありませんが、無料の点検・保証が品確法の10年となっているのは残念ですね。

せっかく、3世代が住める長期優良住宅を標準仕様としているのですから、1世代分の30年は無料の点検・保証対象として欲しいものです。

まとめ

一条工務店のアイスマートの坪単価と同価格帯の他社住宅商品とを比べてみた場合、印象的なのは、やはり同社のキャッチフレーズにある「 家は、性能 」「 モデルハウス仕様が標準仕様 」が表れているということです。

その頑なまでのこだわりは、一部ユーザーには「融通がきかない」や「注文住宅なのに好きな間取りにできない」などの不満となる場合もあるようです。

しかし、年間の戸建て販売戸数トップの数字が示すように、多くのユーザーに認められているのも事実でしょう。

今回は、一条工務店のアイスマートを中心に、坪単価が同価格帯の他社注文住宅商品と比較しましたが、表に表れない各社の魅力もあります。

例えば標準仕様ではないが、オプションに魅力的なオリジナル商品がある、あるいは外観・内外装のデザイン・センスがいい、などです。

いずれにしても、それらを総合的に比較検討して、一生に一度のマイホームが叶えられることを願っています。

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