はじめまして。中島と申します。私は住宅業界の職人として働いていました。その中では外壁塗装やリフォーム、住宅などのさまざまな作業に従事してきました。
そうした中、現在では「どの会社に工事を頼めばいいのかわからないお客様」と「優良工務店」を結びつけるサービスをしています。
私がこのような取り組みをしている理由は、私自身が建築業者の手抜き工事を何度も目撃しており、この現状を何としてでも解決したいと考えたからです。これは、高校卒業後の就職・転職活動がきっかけでした。
高校卒業後、工場に勤めるもすぐに退職
私は工業高校を卒業したあと、近所にあった工場に就職しました。このとき私が勤めていた工場は、保冷剤を扱う職場でした。このときの仕事は、1日中ひたすら保冷剤を梱包するというものです。
ただ、何ヶ月経っても同じ内容の単調な仕事が続いていたため、私の「作業に対するモチベーション」は次第に低下していきました。結局、私はこの工場での梱包業務に飽きてしまい、半年ほどで退職してしまいました。
保冷剤の工場を退社した後、仕事の当てがなかった私はしばらくニートのような状態になっていました。
それから1ヵ月経過し、仕事がないことに焦りを覚えた私は、壁紙職人の友人に「いま仕事を探しているけど、良ければ紹介してもらえないかな?」と声を掛けました。
その友人は知り合いに外壁塗装の会社を営む人がおり、私にその職場を紹介してくれました。外壁塗装とは、住宅のメンテナンス(塗り替え)を行う仕事のことを指します。そして私は、友人の紹介で外壁塗装を行う会社に就職し、外壁塗装職人の道へと進みました。
外壁塗装の職人として働く
外壁塗装の職人としてのメインとなる仕事は、「既存の建物の塗り替え」になります。通常、住宅などの建物は、コンクリート打ちっぱなしの耐久性の高い家でもない限り、10年に一度は塗り替えをしなければなりません。
もし、コンクリートでない一般的な住宅が塗り替えを行わない場合、それが雨漏りの原因になってしまいます。さらに、日当たりの悪い部分にコケが生えるなどして、見栄えがとても悪くなってしまうのです。
そして実際のところ、塗り替えをする前の住宅の外壁は、かなりボロボロになっています。さらに、外壁のいたるところにコケが生えており、色あせてツヤがない状態です。
このような外壁であっても、外壁塗装職人の手が加わることで汚れが一切ないうえにピカピカとツヤが出るような状態になります。その出来栄えは、「新築住宅の外壁ではないか?」と思ってしまうほどです。
また、外壁塗装を行う上でリフォームが必要な場合は、それに見合った職人さんに施工を依頼していました。
例えば、部屋を広くしたいのであれば、大工に依頼するといったような形です。建設業は、いろいろ工程があるのですが、業界内にそれぞれのプロが存在するため、その都度で仲間内の職人に施工を頼みます。
外壁塗装をする職人がいれば、柱を直す大工がいます。また、屋根を張り替えたければ屋根屋に頼みます。そのほかにも、畳を貼るのであれば、畳屋がいます。そして、これらを束ねるのが「工務店」という存在になります。
このようにリフォームといっても、いろいろある工程で職人がそれぞれプライドを持って、1つの目標に向かって仕事をこなしていくのです。
リフォームという大きなカテゴリーの中の外壁塗装にすぎませんが、そこに全力をかけて仕事をしている方がいるということを働いていて学ぶことができたのです。
また外壁塗装の職人は、新築住宅の仕事も行います。その内容は、「棚や押し入れ、床などの木の部分にニスを塗る」というものです。
木製の棚や床などにニスを塗っていない場合、質感がザラザラとしています。さらに、湿気などでカビが生えてしまったり腐ったりしてしまいます。こうした事態を避け、さらに質感をよくするためにも、ニス塗りはとても重要な工程となっています。
そして、私が外壁塗装の職人として働いていた頃、ある新築住宅の内装を担当していたときに、その住宅の建築を行った大工と話をする機会がありました。
当時、外壁塗装以外の仕事にも興味を抱き始めていた私は、自分の見識を深めるため、その大工にさまざまな質問を投げかけました。
大工との会話を通して、家づくりの楽しさや奥深さを学ぶ
まず私はその大工に、「さまざまな建設業がある中で、なぜ大工を選んだのか」を質問しました。するとその大工は、「もともと家づくりに興味があり、家を作る際の主役になれるので大工を志望した」と答えました。
実際のところ、建築業において普通の職人は、あらかじめ決められた一工程の仕事しか担当しません。例えば、当時私の職業であった外壁塗装職人であれば、外壁塗装や新築時における内装の塗装くらいしか出番がありません。
その一方で大工であれば、外壁塗装も含めて家づくりに関する業務すべてに関わることができます。大工は何もない更地の状態から家が完成していく過程を見ることができ、自らの手で住宅を作り上げていくことができるのです。
このことを聞いた私は、大工がどのように家づくりに携わるのかについて強く興味を持ちました。
さらに、当時の私自身が外壁塗装職人だったことから、外壁塗装職人がよく担当するリフォーム・リノベーションについて、大工であればどのような業務を行うのかについても気になりました。
その大工がいうには、新築一戸建てを希望するお客様から「かっこいい黒の家」を建ててほしいと言われたことがあるそうです。
そのとき彼は、「黒といってもいろいろあるし、どのようなものをかっこいいと感じるかは人によって異なる」と考えました。
そこで彼は、お客様がどのようなものを素敵に思ったりかっこいいと感じたりするのかを知るため、お客様の予想を超えるアイデアを提案して現実にできたとき、お客様に感動してもらうことができたのだそうです。
他にも、彼自身が大工としてリフォーム・リノベーションを担当するときの状況や作業内容について話してくれました。
リフォームの場合、新築と違ってゼロから新しいものを造るわけではありません。つまり、既に存在している配管や配線、構造などに追加する形で新しいものを造ることになります。
リフォームやリノベーションを行うとき、必ず何かしらの制約や制限がある状態になります。これにより、実際に工事が始まってからいろいろな問題が起こることが多いです。
例えば、どうしても動かせない柱があった場合、その柱を動かさずにリフォームを進める必要があります。そうなると、「柱をそのままにしつつも、どこまでお客様の希望通りのリフォームができるか」といった幅広い対応力が求められます。
そしてその大工は、「大工が担当するリフォームやリノベーションでは、業務を進めるうえで直面する課題を一つ一つクリアしていくことに楽しみがある」と教えてくれました。
実際に大工として働いている人から、「大工がどのような仕事を担当し、どのように作業を進めるのか」について聞いた私は、「自分も大工のように深く家づくりやリフォームに携わる仕事がしたい」と感じました。
そこで、外壁塗装の会社を退職し、大工として働く道を選ぶことにしました。
外壁塗装職人を辞め、大工として働き始める
外壁塗装の会社を退職することを決めた私は、自分を大工として雇ってくれる会社を探すことにしました。
そしてこのとき、大工などの職人を大勢束ねている企業が地元にあることを突き止めました。そこで私はその会社に就職し、大工として働くことにしました。
大工としての仕事は楽しく、家づくりに関するさまざまな知識やスキルを身につけることができました。
ただ、大工として働いていくなかで、1つの大きな不安を感じるようになりました。その不安とは、大工などの職人の待遇が一向に良くならないことです。
この理由がどうしても気になった私は、「住宅業界の収益構造」について調べることにしました。そして調査をしていくうちに、住宅業界では職人や工務店が最も不利な立場にいることに気が付きました。
この職種は、仕事を受注したもの(元請け)が儲かる世界です。
より具体的にいうと、住宅メーカーがお客様から仕事を受注し、その仕事を工務店や職人に依頼します。このとき住宅メーカーによって、全体の利益のうち何割かが差し引かれます。
さらに、工務店や職人は、得られる利益の中で材料費や人件費などを捻出しなければいけません。そのため、工務店や職人にはほとんど利益が残らなくなってしまいます。
職人としての利益がでなければ、それが給料に還元されることはありません。また当然ながら、社会保険などの福利厚生を充実させることもできません。
事実、住宅業界では、ハウスメーカーが工務店や職人に仕事を依頼する場合、利益全体の3~4割が仲介料として抜かれてしまいます。これは外壁塗装の場合も同じであり、私が外壁塗装職人であった頃も、私の給料は低いものでした。
また、私が在籍していた会社では一切行われていなかったものの、職人の視点で現場を見てみると、周りに存在する下請けの工務店や業者の中に手抜き工事を行う企業が多いことに気付きました。
例えば外壁塗装の場合、本来であれば塗料を塗るための準備である下地という工程から家を塗り始めていきます。下地と合わせて3回塗装を行い、3回目の塗装で最終工程となります。
一方、外壁塗装での手抜き工事の場合、下地をせずに最初から最終工程の塗装を行います。
ただ、最終工程が完了して家に色がついた場合、素人の方では手抜き工事が行われたことに気付かれなくなります。
しかし、手抜き工事による外壁塗装の場合、私のような職人から見れば塗装が完了した後のツヤは明らかに違います。
また住宅の塗り替えを行う際に、以前の業者が手抜き工事で塗装を行っていた場合、新しく担当する業者がその負担を背負うことになってしまいます。
私が外壁塗装の職人として業務を担当していた頃、7割ほどの確率でこのような手抜き工事に遭遇していました。
半分以上の確率で手抜き工事がされていることは世間ではあまり知られていませんが、これが工事現場での現実です。
また、私が大工として働くようになり、住宅に関する知識が以前よりも身についてきた頃、出勤時に車の窓越しで他社の新築工事を見ることがよくありました。
そして、窓越しで現場をよく観察してみたとき、同様に手抜き工事を頻繁に見かけました。
例えば、他社が行う新築の工事を見たときに、基礎の部分がなくて驚いたことが何度もあります。当然、リフォームについても高い確率で手抜き工事の現場を見たことがあります。
ただ、これら完成物だけを見ると一般の方からは「手抜きがされているかどうか」の見分けがつかないという共通点があります。
工務店や業者などが材料費を減らしたり工程を省いたりすれば、その分だけ住宅の質が落ちることになります。
一般の方にはほとんど知られていないことですが、私のような住宅の職人の視点から見ると、あらゆる現場で粗悪な工事を頻繁に目撃します。
高額な仲介料が手抜き工事を生み出す
それでは、このような手抜き工事をする工務店や職人だけが悪者なのでしょうか。実は、必ずしもそうとはいい切れない部分があります。
これには既に述べたように、住宅業界で工務店や職人が不利な立場にいることが大きな原因となっています。
手抜き工事をしてしまう工務店や職人の場合、元請け業者(ハウスメーカー)から3~4割の利益をピンハネされた状態で仕事を請け負います。
残った利益の範囲内で、材料費や人件費などの必要経費をすべて捻出しなければいけません。
そのため、下請けの工務店や職人は、常に利益が出るかどうかのギリギリな状態で業務を行わなければならないのです。
このとき使用する材料費を減らせば、その分だけ下請けである工務店や職人の利益は大きくなります。
また、工程をいくつか省略すれば、作業日数を短縮できて人件費を安く抑えることができます。このような手抜き工事を行わなければならないほど、下請けの工務店や職人は苦しい立場に置かれているのです。
もちろん、下請けの工務店や職人が手抜き工事を行うのは、断じて許される行為ではありません。
しかし、元請けの住宅メーカーが利益の3~4割もピンハネしてしまう現状を見ると、手抜き工事を行う工務店や職人だけが悪いとは必ずしも言い切れない部分があるのもまた事実なのです。
また、私が大工として工務店に勤めていた頃、在籍していた会社の同僚に、前の会社で手抜き工事を指示されていた社員がいました。
私は、「手抜き工事を行う企業の現実を知っておきたい」と考え、彼が前の会社に勤めていた頃の話を聞くことにしました。
彼が以前勤めていた会社では、元請けのハウスメーカーから4割もの仲介料を抜かれ、どう考えても採算性が合わない中で仕事を行っていました。しかも、あらかじめ指定された期限までにすべての業務を終えなければなりません。
そのため、彼が以前勤めていた会社は、「材料費を削ったり必要な工程を飛ばしたりするしかない」と判断し、手抜き工事を行ってしまったのだそうです。
そして彼は、「今いるこの会社では手抜き工事などの不正はないけど、他の会社では当たり前のように行われていますよ」と話してくれました。
良い家を建ててもらいたい
このようなハウスメーカーの高額な仲介手数料や手抜き工事の実態を目の当たりしたことで、「適正価格で家を建ててもらいたい」と思うようになりました。
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